眼球運動の理解を深めることで、デバイスの操作なんかに目を使えるようになるほか、ユーザビリティや健康状態の検出も可能となります。また眼球運動を、自閉症スペクトラム障害や失読症、脳震とうなどの検査で利用できる可能性があるようです。
ただ、これまでアイトラッキングには、高価で大がかりな専用システムが利用されていたため、データ収集の機会が制限されていました。こうしたなかGoogleは、スマホのフロントカメラを使用して、高精度で眼球運動を検出できる技術を開発。これにより、アイトラッキングの利用はいっきに加速しそうです。
最先端のウェアラブルアイトラッカーに匹敵する精度アイトラッカーモデルは、MIT GazeCaptureデータセットでトレーニングされた多層フィードフォワード畳み込みニューラルネットワークが中核となっています。顔検出アルゴリズムにより、スマホカメラから得た画像データから目の領域だけをトリミングして入力にします。
パーソナライズされていないモデルではエラーが多かったものの、約30秒のキャリブレーションデータで微調整することにより改善。スマホスタンドの利用と手持ちの両方で、最先端のウェアラブルアイトラッカー(赤外線カメラを目の近くに配置した特殊な視線追跡ハードウェア)に匹敵する精度が示されました。
数分の注視データから精神的疲労を予測こうして作成されたアイトラッカーモデルにより、これまでの神経科学/心理学研究の発見を再現できたといいます。また、視線トラッキングが、文章の理解度推定に役立つことがわかりました。
さらには、わずか数分の注視データから精神的疲労が予測でき、これまでの主観をもとにした疲労テストよりも、早期で確実に精神的疲労が検出できるようになる可能性が示されています。
世界中で利用されるスマホで、正確なアイトラッキングができるとなれば、アクセシビリティやユーザビリティの向上、身体的/精神的健康の管理や業務効率の測定……といった多岐にわたる用途で役立てられそうです。
参照元:Accelerating Eye Movement Research for Wellness and Accessibility/ Google AI Blog
(文・山田洋路)