マインドフルネストレーニングは不安やストレスの軽減、レジリエンスの向上を助けるWell-biengアプローチです。ケンブリッジ大学のHatice Gunes博士は、習熟したコーチやトレーニングプログラムが不足している、あるいは定期的なセッションの機会を設けづらい…といった課題を、ロボットコーチの導入で解決しようとしています。
アプリやリモートセッションといった手もありますが、Gunes氏によれば、人々は物理的存在感があるロボットをより魅力を感じ、行動に大きな影響を与えるとのことです。
Gunes氏は、2つのプロジェクトを通して、ロボットコーチの設計について探っています。
ロボットの見た目が期待と一致最初のプロジェクトでGunes氏は、フォーカスグループとインタビューを通じて、ロボットにコーチングされることに対しての参加者の態度と、ロボットに何を期待するかを調査しました。
調査からは、ロボットの見た目は機能への期待と一致することがわかりました。つまり、リマインダーの通知や共感のジャスチャーといったシンプルな機能の提供であれば、イヌ型ロボットなどが向いていますが、会話やコーチングなど高度な介入を提供するのならヒューマノイドロボットが良いようです。
また、プライバシーが守られるかが参加者にとっての最も大きな懸念事項でした。
コーチングセッションの効果は人によってバラつきあり2番目のプロジェクトとしてGunes氏は、ヒューマノイドロボットとして人気のペッパーを使用したコーチングセッションを実施。人間によるものと比較しました。
ペッパーは人間のコーチによって隣の部屋から操作され、会話やジェスチャーを反映。このことは参加者に知らされていましたが、それでもロボットと対話している印象を受けたといいます。
ロボットと人間、いずれのセッションも参加者がリラックスして落ち着くとの効果があったものの、人によるバラつきがあったようです。
たとえば、ビッグファイブの誠実性スコアが高い人は、ロボットがもっと自然に動くことを期待し、神経症的傾向スコアが高い人は、セッションをそれほど楽しんでいませんでした。この結果は、ロボットコーチの設計にパーソナライズが必要なことを示しています。
表情や挙動に呼応するロボットコーチ開発を目指すGunes氏は、ロボットコーチが人間のコーチにとって代わることはできないものの、人間のように不安や疲れなどが非言語シグナルで伝わらないとのメリットもあるといいます。また、ロボットはプログラムによる安定したセッションが可能です。
Gunes氏はセッション中に参加者の表情や挙動を録画し、機械学習モデルに統合することで、よりインタラクティブなロボットコーチの開発を目指しています。
参照元:Wellbeing on demand/ University of Cambridge
(文・山田洋路)