カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究者らは、レーザー光と超音波を使用してたイメージング技術を開発しています。「光音響コンピュータ断層撮影法(PACT)」として知られる同技術は、ラットで体内の構造をイメージングできることや、マンモグラフィのように乳房の血管の観察で利用できることが示されています。
このほど研究者らは、同技術によりヒトの脳をイメージングできることを初めて実証しました。将来的に同技術が、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を補完する安価な脳機能イメージングソリューションになる可能性があります。
シンプルで安価、コンパクトな装置を用いたイメージング技術研究者らは、正確で高感度なイメージング技術をさらに改良することで、非常に小さな血管を通過する血液の量や、その血液の酸素添加レベルのわずかな変化さえも検出できるようにしました。これにより、脳の活動が測定できるように。たとえば映画を観ているときに、脳の特定の領域で血流が増加するのをモニタリングできるといいます。
この種のイメージングは、今でもfMRIにより可能ですが、装置が非常に高価なこと、医療器具や外科用インプラントに鉄が含まれている際には特殊な措置が必要なこと、撮影の際に狭い空間に入らなければならないこと……といった欠点もあります。
これに対して研究者らによる技術は、はるかにシンプルで安価、コンパクトな装置を用いるため撮影時に狭い空間に入る必要もありません。
レーザー光を吸収して振動するヘモグロビンをセンシング同技術は、レーザー光のパルスを頭に当てることで機能します。頭皮と頭蓋骨に照射されたレーザー光は、酸素を運ぶ赤血球内のヘモグロビン分子に吸収されます。光から得たエネルギーによりヘモグロビン分子が振動するのを、超音波センサーアレイでキャッチ。センサーからのデータをコンピューターアルゴリズムで処理し、脳全体の血流と酸素添加を示す3Dマップを生成する……といった仕組みです。
今回研究者らは、頭蓋骨再建手術を行う前の患者を被験者に、同技術がヒトの脳で機能することを実証しています。現在のところ、頭蓋骨と髪はイメージングの障壁となっていて、今後研究者らは、光ファイバーの使用やアルゴリズムによる補正で、同技術を改良していく計画です。
参照元:Recording Brain Activity with Laser Light/ Caltech
(文・山田洋路)