将来的には、一般的なスマートウォッチでホルモンの分泌まで制御できるようになるかもしれません。
多くのスマートウォッチは、心拍数の測定に緑色LEDを使用しています。ETHチューリッヒの研究者らは、この緑色LEDを遺伝子発現の調節に利用する手法を考案しました。
皮膚を介して細胞の挙動に変更を加えることで、たとえばインスリンなどが分泌できるといいます。
緑色LEDに反応する分子スイッチを開発研究では緑色LEDをON/OFFするのに、標準的なスマートウォッチのソフトウェアをそのまま使用しました。ただし、緑色LEDのON/OFFに反応する“分子スイッチ”のシステムについては、やや複雑な設計が必要だったようです。
分子スイッチはヒト細胞(プロトタイプではヒト胎児腎細胞293を採用)の連結部、細胞膜に埋め込まれます。ヒト細胞は、内部に遺伝子ネットワークが導入されているもの。遺伝子ネットワーク構成に応じてインスリンやそのほかの物質が生成できます。
緑色LEDが点灯すると、分子スイッチの細胞内に突き出た部品が切り離されて細胞核へ。そこでインスリン産生遺伝子なんかがトリガーされます。緑色LEDが消えると、切り離された部品が戻ってきて本体と再接続する…といったシステムです。
市販の電子デバイスを用いた初の実証研究者らは、豚の皮とマウスでテストを実施。ヒト細胞と分子スイッチシステムを移植して、スマートウォッチで制御しました。
この手のインプラントを市販の電子デバイスで制御できたのは初めてだといいます。
同アプローチは、糖尿病の治療なんかに利用できる可能性があります。ただ研究者によれば、規制上のハードルなどから、向こう10年以内に臨床現場に導入される可能性は低いようです。
参照元:Controlling insulin production with a smartwatch/ ETH Zurich
(文・山田洋路)