今日では、多くの企業が保有データを活用したビジネスモデルや、複数組織間でのデータ共有による新たな価値提供に注目しています。しかし、データ活用の際にはプライバシー保護という課題がついて回り、十分にデータを活用できていないというケースもあるようです。
そんな中、注目されているのが1980年代より研究されてきた技術「秘密計算」。長らくコンピューティング能力とネットワーク通信速度に課題があり、実用化には至っていませんでしたが、2020年10月株式会社Acompanyが秘密計算エンジン「QuickMPC」を独自開発しました。
そもそも、「秘密計算」とは?秘密計算とは、データの活用時にローデータ(生データ・非暗号化データ)に戻さず、暗号化したままのデータを使用して分析などを行うことができる技術です。従来の暗号手法では、データ分析などを行う際にローデータに戻す必要があり、プライバシー保護の観点で課題となっていました。高水準の暗号手法でも、データ保管時までは暗号化できますが、活用時にはローデータに戻すというのが一般的なようです。
この秘密計算には、代表的な手法が2つあるといいます。そのひとつが「完全準同型暗号ベース」。これは、鍵を用いて暗号化することで秘匿性を担保するというもので、比較的簡単に構築できる手法です。もうひとつは「秘密分散+マルチパーティ計算(MPC)ベース」。この手法は構築難度が高い反面、計算スピードは早く、実行時間は完全準同型暗号ベースの約5万分の1ともいわれています。
汎用的な「QuickMPC」同社が開発した「QuickMPC」は、MPCによる秘密計算エンジンです。先述の通り、MPCエンジンの構築は高度な専門性とエンジニアリング能力を要する高難度な作業のため、世界的に見ても非常に希少。また、開発されてきたMPCエンジンは研究目的のものが多いため、実際のユースケースに合う実装を行っていく上で柔軟性やセキュリティ上の問題を抱えるといった課題があったといいます。
そこで同社は、汎用性の高いMPCエンジンを独自開発する構想を立ち上げ「QuickMPC」を開発。リリース以降、デジタルマーケテイングや医療などのデータ活用時のプライバシー保護が重要である領域への提供を推進し、手軽・高速・安全な秘密計算を実現してきました。
そしてこのたび、これまでの取り組みの中で見えてきたニーズに応えるべく、「QuickMPC」の機能強化と秘密計算アルゴリズムの拡充および採用・組織体制の強化を目的とした資金調達を実施。ANRI、Beyond Next Venturesの2社をリードインベスターとして、DG Daiwa Ventures、epiST Venturesから総額2億円を調達しています。
PR TIMES
(文・Higuchi)