気候変動や薬剤/ワクチンの開発といった現実課題の解決に量子コンピュータを役立てるには、量子技術の大幅なスケールアップが求められます。
ニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究者らは、シリコンチップ構造を一からから見直し、“量子コンピュータ・アーキテクチャの欠けているパズルのピースを発見”したようです。今回開発の技術により、最大400万量子ビットまでの制御が可能になるといいます。
チップの上から量子ビットを制御研究者らは、量子技術のスケールアップで大きな課題となっている、ワイヤリング問題を解決した可能性があります。
マイクロ波の磁場で量子ビットを制御するためには、各量子ビットの真横に同軸ケーブルを配線する必要があります。量子ビットが増えるほどより多くの配線が必要になり、スペース占有や熱の発生といったやっかいな問題につながっていました。
そこで研究者らは、同軸ケーブルをシリコンチップ上に配線するのではなく、チップの上からすべての量子ビットを同時に制御するアプローチを検討。同アプローチは、1990年代にはすでに提唱されていたようですが、今日まで実現には至っていませんでした。
数千量子ビットの量子コンピュータが10年以内に研究者らは、シリコンチップの真上に「誘電体共振器」と呼ばれる水晶プリズムを設置。マイクロ波の波長を短くして、すべての量子ビットのスピンを制御する磁場に変換できるようにしました。
共振器のプロトタイプを開発した後、量子ビットでの実証にも成功。これにより、数千量子ビットの量子コンピュータが10年以内に開発される可能性が見えてきたようです。
研究者らは次のステップとして、同技術を使用し、シリコン量子プロセッサの設計を簡素化することを計画しています。
参照元:'Missing jigsaw piece': engineers make critical advance in quantum computer design/ UNSW
(文・山田洋路)