グーグルは、秋に発売する「Pixel 6/6 Pro」の一部を公開しました。詳細は不明ながら、同モデルにはグーグルが独自に開発したSoC(システム・オン・チップ)の「Tensor」が搭載される予定。
その他のスペックは詳細不明ですが、外観も公開されています。それを見る限り、Pixel 5までのPixelとはデザインも一新されており、Pixel 6 Proには、光学4倍の望遠カメラも搭載されるようです。
Pixel 6/6 Proをチラ見せしていたグーグルですが、その前に投入するのがミドルレンジモデルの「Pixel 5a(5G)」です。同モデルは、8月18日に発表され、発売は26日を予定しています。端末の名称を見ればわかるとおり、同モデルは昨年10月に発売された「Pixel 5」の廉価版。Pixel aシリーズは、カメラ性能をそのままに、コストダウンを図った端末ですが、Pixel 5a(5G)もコンセプトは同じです。
例えば、SoCにはPixel 5と同じSnapdragon 765Gを採用。超広角と標準のデュアルカメラもセンサーはまったく同じで、AIによる処理で画質を高めています。ワイヤレス充電がなかったり、メモリ(RAM)の容量が少なかったりと、Pixel 5比でグレードダウンしている箇所もありますが、そのぶん価格は大幅に下がり、グーグル直販なら5万1700円で購入することができます。
3〜4万円台の端末が多いミドルレンジモデルとしてはやや高めではありますが、カメラ機能が上位モデルと同じで3年間のアップデート保証などもあり、お買い得感の高い端末と言えるでしょう。
ソフトウェアやWebサービスが本業であるグーグルがPixelを開発する狙いは、同社のサービスをハードウェアと掛け合わせることでユーザーに届けていきたいからです。わかりやすいのはカメラで、いくらAIの処理に優れていても、光を取り込むためのセンサーがなければ、カメラとしての機能は提供できません。他社のスマホに提供する手はありますが、センサー性能が端末ごとに異なるため、チューニングには大きな手間がかかるうえに、望んでいる画質を提供できるかどうかも不透明になります。
同様に、Pixelにアップデートで提供された通話スクリーニングの機能も、電話機能がなければ成り立たないサービスです。これは、Googleアシスタントを使ってかかってきた電話を選別する機能で、ユーザーの代わりにGoogleアシスタントが応答します。電話というハードウェアに密接した機能を使うだけに、こうしたサービスを提供しようと思ったら、自社でハードウェアを展開するのが手っ取り早かったということでしょう。
このようなハードウェアとAI、ソフトウェアの融合を突き詰めたのが、フラッグシップモデルのPixelと言えます。グーグルがPixel 6/6 Pro用に専用のSoCであるTensorを開発したのも、そのためです。AIの処理能力に優れたチップセットを自社で手掛けることで、グーグル自身が目指す世界観をより実現しやすくなります。
こうした事情をふまえると、秋に発売されるPixel 6/6 Proには、Tensorの高い処理能力を生かした新機能が搭載されることが期待できます。
一方で、ハイエンドモデルだけでは、スマホ市場でシェアを広げることができません。SoCを専用に作り起こしたことから、Pixel 6/6 Proは価格も高くなる可能性があります。日本でも、電気通信事業法が改正され、端末への割引に大きな制限がかかった結果、売れ筋の端末は多くがミドルレンジになりました。ソフトウェアやAIの力を広く行き渡らせようとしたときには、やはり価格のこなれたミドルレンジモデルが必要になります。
グーグルがミドルレンジモデルに力を入れているのはそのためで、特にiPhoneのシェアが高い国に対して、集中的に端末を投入している傾向があります。日本は、そうした国や地域の1つ。実際、Pixel 5a(5G)は昨今の半導体不足のあおりを受け、生産台数が絞られてしまった結果、日本と米国限定で発売されることになりました。グーグルによると、過去の実績も考慮していといい、Pixel aシリーズの売れ行きがよかった日本市場が優先されたそうです。
とは言え、その“メジャー感”に反し、国内でのシェアを見るとPixelシリーズはまだ高いシェアを取っている状況ではないことが分かります。Reno Aシリーズの投入で勢いをつけ、シェア上位を取るようになったOPPOや、現在急成長中のXiaomiと比べると、拡大のペースは緩やかな印象を受けます。ミドルレンジを投入する中国メーカー各社は、MVNOや家電量販店などに販路を広げていますが、シェアを拡大するうえでは、グーグルにもこうした対応が求められそうです。
(文・石野純也)