スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)パビリオンにて、「Deep Fakes: Art and Its Double(ディープフェイク:アートとそのダブル)」展が開催されています。アートの歴史においては、コピーがオリジナルのステータスを脅かすと同時に、文化的・精神的・商業的な価値増幅の役割も担ってきました。
AIやイメージングといった技術が高度化するにつれ、精巧なコピーが容易になり、オリジナルを超越した表現すら可能になっています。アートのコピーがネガティブな文脈で語られることが多い中、この特別展は、コピーによる表現が獲得した新たな価値と可能性について気づかされる内容に。
印象的な作品のいくつかは、写真や映像を通してWebサイトからも鑑賞できます。
AIが彫刻作品を集合的にコピーAIによる創作物は、オリジナルの要素を元にしていることからコピーといえなくもありません。「Helin(ヘリン)」は、3Dスキャンデータ12万件を元にした、AIとロボットアームによる彫刻作品です。
偏見を取り除き、人間の表現における普遍的な観点を確立すべく、データセットにはあらゆる時代と文化にわたる素材を含めたといいます。制作風景を収めた映像を観ると、集合的な意図が顕現する様子を目の当たりにすることとなります。
3DCGでレプリカとリアルを行き来「Replica / Real / Replica(レプリカ/リアル/レプリカ)」は、ロンドンの博物館(19世紀の建築家、ジョン・ソーン卿が建築)に展示されたレプリカと現地を行き来するバーチャルツアーとなっています。
博物館やエジプトのファラオ、セティ1世の墓などを表した3DCGは、LiDARスキャナによってキャプチャされたデータから構築。約23分間の映像を通して、虚実と空間、時間を超えた世界に没入できます。
オリジナルよりも忠実なコピーがマルチメディア技術で実現仏教のシンボル仏像が、アジア全域の文化や精神性にもたらした影響は計り知れません。コピーされ続けた偶像を、さらに最新のマルチメディア技術で再現した作品が「Double Truth(ダブル・トゥルース)」です。
オリジナルをあらゆる角度から捉えた数千枚の写真から、3Dモデルを制作。並外れた忠実度でデジタル化され、オリジナルの可視性を上回る形状で表現されました。ゆっくりと回転する15体の仏像が、Webサイトからも鑑賞可能です。
ほかにも「Deep Fakes: Art and Its Double」展では、VRやAR、ブロックチェーンといった技術を活用した作品を通して、コピーについての考察やインスピレーションを促してくれます。
参照元:When art and technology intermingle, the copies are real/ EPFL News
Deep Fakes: Art and Its Double/ EPFL Pavilions
(文・山田洋路)