さまざまなジャンルのタイトルが登場し続けているゲームの世界ですが、カーシミュレーションは根強い人気を誇るジャンルのひとつ。グラフィック性能や映像の滑らかさを誇示できるタイトルでもあるため、スペック重視のゲーム機においては重要なポジションになっています。
現行世代のゲーム機におけるカーシミュレーションといえば、PlayStarionシリーズでは『グランツーリスモ』シリーズ、Xboxシリーズでは『Forza Motorsport』シリーズが最も有名です。
この2つのシリーズは、各プラットフォームを象徴するタイトルのひとつでもあり、「このゲームをプレイするためにゲーム機を買う」ユーザーもいるほどです。しかし、この2大カーシミュレーションに異変が起きています。
PS4対応を公式に発表したグランツーリスモ去る9月6日、Sony Interactive Entertainment CEOのJim Ryanが、PS4およびPS5の両機種対応タイトルについてコメント。PS4版からPS5版へのアップグレードを10ドルで提供する、と公にしました。
この両機種対応タイトルの一例に『グランツーリスモ7』が挙げられていることから、公式にPS4への対応が判明した格好です。
これまでのグランツーリスモシリーズの傾向から、現行世代機専用タイトルとして開発が進んでいると思われていました。しかし、今回の発表を受けてPS4版の存在が明らかになりました。
2022年3月4日発売予定が発表された『グランツーリスモ7』ですが、昨年の時点でPS5専用タイトルだからという理由で本体の購入に踏み切った人もいるでしょう。PS4版の発表で、それが覆される形となってしまいました。
2020年11月に登場したPS5。発売から約1年を迎えようとしていますが、ここまでPS5専用のビッグタイトルは、多数登場していると言い難い事実があります。新しいゲーム機を買う大きな理由としては、「プレイしたいタイトルがその機種にしかないから」というものがあります。グランツーリスモシリーズはまさにこれに該当するタイトルで、PS5を牽引する作品のひとつとして期待されていた矢先の発表です。
世界レベルの半導体不足で品薄に拍車がかかっているPS5ではあるものの、ゲーム機の生命線とも言えるエクスクルーシブタイトル(専用ゲーム)の代表選手のグランツーリスモがマルチ対応になるのは大きなインパクトになりそうです。
ライセンス問題で販売休止決定も今年はHorizonを発売するForzaXboxのカーシミュレーションといえば、Forzaシリーズです。このForzaには大きく分けて2つのラインがあって、ひとつはグランツーリスモ対抗とも言える『Forza Motorsport』、もう1つはスピンオフシリーズの『Forza Horizon』。
この2つのゲームは交互にリリースされてきた経緯があり、それに習うと次はMotorsportが出るはずでした。しかし、今年11月にリリースされるのはHorizonの方です。順番が変わること自体はいいにしても、Forzaファンにとってそれよりも問題なことが起こっています。
それは、Motorsportの現行版『Forza Motorsport 7』の販売終了。2017年に登場した『Forza Motorsport 7』は、販売からすでに3年以上が経過。これまでは2年ごとに新作を出してきた同シリーズですが、開発の遅れのためか今年はリリースにこぎつけることができない流れに。
これに伴って浮き彫りなったのが、各社メーカーとのライセンス契約。実車がゲーム中に登場する同作ではメーカーと契約を結んだ上で開発をしていますが、新作の発売前にこの契約期限を迎える事態になってしまっているようです。
これに伴って、9月15日をもって一時的ではあるものの、Xboxのカーシミュレーションの代表作が市場から消える事態になりました。
ここで紹介したタイトルは、その歴史やポジションもさることながら、4K/60fps対応など、現行世代機のスペックをフルに発揮させた仕上がりを求められ続けています。しかし、新型コロナウイルスの影響によって開発環境を変更せざるを得ない状況や、回を追うごとに求める仕様が高くなるゲームシステムなど、開発側に課せられるハードルは高くなる傾向にあります。
その一方で、これらのシリーズはファンの期待も大きいがゆえに、開発に妥協が許されない側面も。
ゲーム2大陣営の思惑どおりに市場が反応するのでしょうか? 動向に注目が集まります。
(文・辻英之)