民間人が宇宙に行ける時代になりましたが、海外旅行に行くような手軽なものではありません。そこで、宇宙空間を体験するための現実的な手段として、VRの活用があります。
EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の天体物理学研究所(LASTRO)は、オープンソースソフトウェア「VIRUP(Virtual Reality Universe Project)」を開発。静的データのレンダリングに重点を置いたベータ版のリリースを発表しました。
VIRUPを用いれば、最新の天体物理学および宇宙論のデータに基づいて、リアルタイムでバーチャル宇宙空間を構築できるとのこと。自宅からバーチャル宇宙旅行を楽しめる日はそう遠くないかもしれません。
8つ以上のデータベースのデータを視覚化VIRUPでは、映画のような特定のシーケンスのレンダリングではなく、宇宙空間にいる観測者視点を再現するような、リアルタイムでの視覚表現の構築を目指しています。
これまで収集された観測データや科学的なシミュレーションデータをもとに、テラバイト級のデータを90fpsでレンダリング。現時点で、8つ以上のデータベースからのデータを視覚化できるようです。
例えば、5000万の銀河や300億個のオブジェクトから成るSloan Digital Sky Survey、15億個の光源から成る天の川銀河のGaia data、太陽系外惑星データのソースを集約したOpen Exoplanet Catalogなどが、挙げられています。
プラネタリウムやドームで上映の作品も将来的には、観測データやシミュレーションデータがさらに膨大になることが予想されていますが、VIRUPではこれらの統合も視野に入れています。フレキシブルな調整やデータの追加を考慮し、チームはグラフィックエンジンまでプロジェクト専用のものを開発したようです。
VIRUPはVRゴーグル以外にも、プラネタリウムやドームといった環境にも対応。すでにVIRUPを活用した短編映画『Archaeology of Light』が登場し、9月には東京科学技術館のシンラドームで上映されました。
VIRUPの最初のリリースではまだデータの操作が少し荒く、例えばシミュレーションのレンダリングがリアルタイムで実行できないなどの制限があるよう。今後はさらに豊かな視覚表現が実現しそうです。
参照元:Explore the universe with virtual reality/ EPFL News
(文・山田洋路)