NPO法人コミュニティリンクが運営するアーバン・イノベーション・ジャパン(UIJ)は、スタートアップ企業と行政職員が協働し、自治体の課題を解決するプロジェクトを展開中。2017年の神戸市での取り組みを皮切りに、全国14の自治体でプロジェクトを実施してきました。
その中でも、神戸市での取り組み「Urban Innovation KOBE」は継続的に実施され、2021年上期には8課題のうち7課題を採択し実証中です。そしてこのたび、2021年下期のプロジェクトを始動。協働実験のテーマ5つを公開し、参加するスタートアップ企業の募集を開始しました。11月21日まで応募を受け付け、年内に採択企業を決定、来年3月末までに実証実験を終える予定とのことです。それでは、発表された5つのテーマを紹介していきます。
子どもたちを守りたい!使いすぎを防ぐネットやスマホ利用の最適化1つ目は、小中学生のネット・スマホの使い過ぎ傾向を改善するツールの実証開発。神戸市では、2017年頃より「スマートスマホ都市KOBE」の取り組みとして、子どもたちがネット・スマホと上手に付き合うための議論を重ねてきました。当初は、ネット・スマホ利用への親や学校の干渉を嫌がる子どもが多数派でしたが、2021年のフォーラムでは「親と話し合いたい」「何か外部からの支援が欲しい」など、ネット・スマホを使いすぎる自分への違和感を話す子どもが増えてきたようです。
そこで今回のプロジェクトでは、無理なくネット・スマホとの距離感を保てるアプリなどのツールの開発を目指します。実証実験では、「スマートスマホ都市KOBE」に参加している中学校3校と小学校1校および「ゲーム依存」を専門とする神戸大学大学院医学研究科の曽良一郎教授への協力要請が可能。実証成功後は、小学校163校と中学校81校の計約11万人の小中学生へ総合学習の教材として展開予定です。
XRを活用し、若者向け防災コンテンツを作る2つ目は、VR・ARやゲーム性を取り入れた若者向けの防災コンテンツの開発。神戸市の市民防災総合センターでは、個々の防災意識を高めるため、「地震体験」や「暴風雨体験」、「煙、暗闇体験」などができる体験型の防災訓練コンテンツを展開しています。特に、若者の防災意識を高めたいという課題があるようです。
そこで、アバターによる仮想空間での災害体験や、脱出ゲームのようなゲーム性を取り入れた体験学習など、若者の興味関心を喚起できる防災コンテンツの開発に挑みます。
危険物施設の立入検査をデジタル化、事故を減らす3つ目は、危険物施設の立入検査をDXするアプリなどの開発。危険物施設には各消防署の立入検査が行われます。しかし、ベテラン職員の退職などにより、職員の熟練度にばらつきがあり、標準的な立入検査を実施することが困難な状況のようです。また、立入検査結果の報告書の作成に時間がかかること、その結果をうまく活用できていないことなども課題のひとつだといいます。
そこで、経験の浅い職員でも、容易に立入検査を実施することができる支援アプリ(モバイル立入検査やチェックリストなど)や、査察結果通知書をデジタル化し、結果を一元管理・活用できるツールの開発に取り組むとのことです。
MaaSで活性化、回遊性を向上させ各施設や店舗の利用者数増加を目指す4つ目は、神戸都心の人の流れを広げるMaaSの構築。神戸市ではこれまでも、連節バス「ポートループ」やシェアサイクル「コベリン」など新型輸送サービスの導入などを進めてきました。しかし、来街者の回遊は三宮周辺の狭い範囲に留まっていることがわかっています。
そこで、「コベリン」などを含む公共交通機関をシームレスに利用でき、来街者の回遊性を向上させるスマホアプリやWebサービスを開発したいとのこと。あらゆる移動手段を一括して検索・予約・決済できる仕組みを目指すようです。
街の掲示板をデジタルサイネージに!?各施設、店舗の利用者数の増加5つ目は、自治体の広報手段のDX。現行の紙や掲示板を使った情報発信には限界がありますが、長田区では高齢者が多いことからデジタル化に踏み切れていないといいます。
そこで着目したのが地域が管理している地域密着型の「広報掲示板」。これを、例えばデジタルサイネージに置き換えることで、若年層と高齢層との情報格差や時代の流れに沿った広報ができると考えているようです。また、「広報掲示板」には、掲載物の仕分けや貼り付けなどの手間がかかるという課題もありますが、これも同時に解決できるでしょう。
PR TIMES
アーバン・イノベーション・ジャパン
(文・Higuchi)