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家庭用ゲーム機版とPC版の販売割合が同等に!? PCゲームの展開メリットとそこに潜むリスクを解説

Techable 2021年11月17日 8時0分

「来年か再来年にはPC向けと専用機向けの販売割合を同等にしたい」というコメントは、大手ゲーム会社カプコンの辻本春弘代表取締役社長が、日本経済新聞の取材に対して寄せたもの。これが推進されれば、国内でも一気にPCゲーム市場が活性化する可能性があります。

ゲーム市場の移り変わりとPCゲームのメリット

国内で「ゲーム」というキーワードから想起されるのは、SwitchやPS4/5などの家庭用ゲーム機かスマホでしょう。しかし、世界的に見た場合、PCゲームの市場は無視できません。

「PCゲームは店頭で見かけたことがない」という人もいるかもしれませんが、主な流通はダウンロード販売。そもそもパッケージ版が存在しないタイトルがほとんどです。

PCゲームのダウンロード販売は、SteamやEpic Gamesストアなどのプラットフォームが有名です。特に、Steamは2003年頃からPCゲーム販売を行っている歴史あるサイトの1つ。

家庭用ゲーム機やスマホにおいてもダウンロード販売は1つの販売形態として確立されていますが、Switchならば任天堂、PS4/5であればソニー、スマホであればAppleやGoogleといったプラットフォームメーカーが運営しています。一方で、SteamもEpic Gamesストアも、WindowsのマイクロソフトやMacのAppleが運営しているわけではありません。こういった違いがあります。

さて、冒頭で紹介したカプコンの辻本社長のコメントですが、これはどういう意味を含むのでしょうか。1つ挙げられるのは、より世界市場を意識したビジネス展開です。

国内メーカーは、国内向けにゲームを開発することで収益を確保できていた時代がありましたが、今は事情が異なります。ゲーム機そのもののスペック向上、シリーズを重ねるごとに重厚長大になるコンテンツなど、開発にかかる時間とコストが増大する傾向にあるのです。

販売開始後も、ダウンロードコンテンツやアップデートなどの対応が必要となり、開発期間も長期化するのが一般的です。となると、1つのゲームをできるだけいろんなプラットフォームに対応させ、たくさん販売しないと収益が上がらない構造になってくるわけです。もちろん、ゲームそのもののグローバル化も必須要件となります。

この観点で考えると、PCゲーム市場はかなり魅力的です。例えば、さきほど例示したSteamは、世界249ヵ国に9,000万人以上のユーザーがいると言われています。PC対応することで、圧倒的な母数を一気に確保できるのはビジネス面においてはかなり有効でしょう。

PCゲームに潜む2つのリスク

しかし、PC対応にはリスクがあるのも事実です。ゲームのブランドイメージを守りたい企業からみた場合、チートやMODはその最たるものではないでしょうか。

チートとは、ゲームの世界においては「(ズル目的の)改造」を意味します。例えば、シューティングゲームなどにおいて、自動で照準を合わせ大ダメージを与えるなどの改造です。これによって、一般プレイヤーは敵から百発百中の攻撃を受けることになり、ゲームバランスの崩壊に繋がり、最悪ユーザー離れを引き起こす可能性すらあります。

家庭用ゲーム機においてもこうしたツールは存在しますが、PC版の場合はこういったチートツールの開発がより容易なため、メーカー側も対策が必要になってきます。

一方のMOD(Modification)は、キャラクターの見た目を変更することなどを指すことが多いです。スキンなどの名称で、ゲーム内のキャラクターやアイテムの見た目を変えられるシステムを含むゲームはありますが、これとは別物でユーザーが勝手に開発したものです。

有名人を模したキャラクターを登場させたり、他社IPのキャラクターでゲームができたりなど、肖像権や著作権の侵害に加えて、ゲームの世界観の崩壊にも繋がりかねません。

MODはこうした見た目の変更以外にも、ユーザー自作のレベルやステージを指すこともあります。こうしたMODの中で優れたものはユーザーに支持され、引いてはゲーム生命の長期化にも繋がるため、一概に否定しづらいという側面があるのでメーカーにとっては「痛しかゆし」といったところでしょうか。

企業側から見ると、在庫リスクがないことに加え、販売価格のコントロール(セールなど)が容易な点で、メリットのあるPC版のダウンロード販売。ステイホームやeスポーツの盛り上がりで、ゲーミングPCの売れ行きも好調と聞く国内市場で勢いもあります。

今回、国内大手カプコンの舵切りで、PCゲームは大きく飛躍することができるのでしょうか。同業他社の動きと合わせて、その動向に注目が集まります。

(文・辻英之)

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