インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、脳細胞間の変化が脳とAIの学習をスピードアップし、パフォーマンスを改善する可能性があることを発見しました。
細胞の変動性がカギ私たちの脳はニューロンと呼ばれる何十億もの細胞で構成されており、それらは「ニューロンネットワーク」によって接続されています。ニューロンは「雪片(雪の結晶)」のようなもので、遠くから見ると同じように見えますが、さらに詳しく調べてみると、まったく同じものは2つとないことがわかります。
これとは対照的に、人工ニューラルネットワーク(AIの基盤となるテクノロジー)の各セルは同一であり、その「接続性」のみが異なります。
近年のAIの進歩には目を見張るものがありますが、人工ニューラルネットワークは人間の脳ほど正確または迅速に学習しないのが現実。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、この原因は「細胞の変動性」にあるのではないかと考えました。
AIのさらなる進化の可能性同大学が、個々の細胞の電気的特性の微調整(変化)を行ったうえで、脳のネットワークをシミュレーションしたところ、同一の細胞を使用したシミュレーションよりも速く学習することがわかったといいます。さらに、ある一定のパフォーマンスを発揮するためには「微調整された脳細胞」のほうが必要な数が少なく、またエネルギー消費が少ないことも発見。
「この発見から、なぜ人間の脳が学習に優れているのかがわかる可能性があります。この知見を活用することで、声や顔を認識できるデジタルアシスタントや自動運転テクノロジーなど、これまで以上に優秀なAIの構築に役立つかもしれない」と研究チームは述べています。
今回の研究によると、脳とAIシステムは「多様なニューロン」があることで、学習をより効率的に行えることを示唆しているようです。「次はエネルギー消費を削減して、AIネットワークを人間の脳と同じくらい効率的に実行できるようにする方法を模索します」と研究チームはコメントしています。
Brain cell differences could be key to learning in humans and AI
(文・Takeuchi)