フランス国立保健医学研究所の研究チームは、ある人がペンチなど機械工具の使用に熟練していることと、優れた言語能力を持っていることの間には相関関係があると発表しました。
使用する脳の領域が同じ複雑な文章の構造を理解する能力は、習得するのが最も難しい言語スキルの1つといわれています。「言語」をつかさどるのは、これまで長い間、脳の特定部分のネットワークを使う非常に複雑なスキルと見なされてきました。しかし、近年の研究から「機械工具の使用」に熟練していることと、優れた構文能力を持っていることとの間に相関関係があることが明らかになっていたようです。
そして、今回フランス国立保健医学研究所がスウェーデンのカロリンスカ研究所と共同で行った新しい研究では、これら両方のスキルが、「同じ脳領域にある神経ネットワークに依存している」ことが示されました。例えば、単語の意味を処理するときなど特定の言語機能をコントロールする脳の領域が、一定の運動技能のコントロールに関与しているといいます。
興味深いことに、機械工具を使用した運動トレーニングは、複雑な構文などを理解する能力を向上させることが可能。逆に、構文の学習を重ねることで、機械工具の使用能力を向上させることも可能とのこと。同研究所は「言語能力の一部を失った患者のリハビリをサポートするために、臨床的に活用することもできる」とコメントしています。
臨床現場への適用を目指すフランス国立保健医学研究所が行った実験の参加者は、「30cmの長さのペンチを使用した運動」と、「フランス語の構文演習」といった複数のテストを完了するように求められます。さらに、ペンチを使った30分間の運動前後に、構文演習のタスクを実行しました。
参加者の脳の動きを観察したところ、研究チームは両方のタスクに共通の脳ネットワークを特定することができたようです。具体的には、「大脳基底核」と呼ばれる領域で、脳が活性化されることを初めて発見しました。大脳基底核とは、大脳皮質と視床・脳幹を結びつけている神経核の集まりです。(出典:『デジタル大辞泉』小学館)
研究チームは現在、この意外な発見を臨床現場に適用する方法を考えています。「私たちは現在、若者など高い運動能力を持つ患者の言語スキルのリハビリをサポートするために導入できるプロトコルを考案しています」と話しています。
Manier des outils améliore nos compétences langagières
(文・Takeuchi)