米国ライス大学の研究チームは、ペロブスカイトで作られた極めて薄い太陽電池の設計において、新しいベンチマークを達成したことを発表しました。
電力効率が最大18%向上ペロブスカイトは、立方体のような結晶格子を持つ化合物です。効率よく太陽光をエネルギーに変換できるため、数年前から次世代太陽電池材料の候補として有力視されていますが、湿気などの水分や太陽光によって劣化しやすいという弱点もあります。
今回の発表は、太陽光が2次元ペロブスカイトの原子層間の空間を収縮させることにより、材料の光起電力効率を最大18%向上させるというもの。同分野では数%ずつしか進歩しないのが普通ですが、今回の発見はその常識を覆すほどの「大きな飛躍」につながる可能性があるといいます。
研究をリードしたAditya Mohite氏は「私たちが発見したのは、材料に火をつけてスポンジのように絞ることで、その方向への電荷輸送を強化できるということ」と言います。ペロブスカイトの上部のヨウ化物と下部の鉛の間に有機カチオンの層を配置すると、層間の相互作用が強化されたようです。
「ペロブスカイトの電力効率は、たった10年で約3%から25%以上に急上昇しました。他の半導体はこのステージまでたどり着くまで、約60年かかったのです。だからこそ、私たちはとても興奮しています」とAditya Mohite氏は話します。
材料の劣化もしにくくなる研究チームはさらに、摂氏80度(華氏176度)に加熱された場合でも、格子の性質により材料が劣化しにくくなるという特徴も発見。同大学が行った実験では、部屋を暗くして温度を上げ、材料の膨張を観察。ライトがオフになると、格子がすぐに「リラックス」して通常の構成に戻ることがわかりました。つまり、生成した熱ではなく、光自体が変換を引き起こしたことを示したのです。
「2次元ペロブスカイトの主な魅力は、湿度に対するバリアとして機能すること。それだけではなく、熱的にも安定しており、イオン移動の問題を解決する有機原子を持っていること」と同大学院生で共同研究者のSiraj Sidhik氏はコメント。
研究チームは今後インターフェースを設計することにより、20%を超える効率の達成および商業化を目指すとしています。
Ultrathin solar cells get a boost
(文・Takeuchi)