チューリッヒ大学の研究チームは、ドローンに搭載されたセンサーとコンピュータのみを利用し、未知で複雑な環境においても自律飛行させることができる新しい技術を開発しました。
ドローン搭載のセンサーを使い飛行森・建物・洞窟など未知で複雑な環境を探索する場合、ドローンに勝るものはありません。高速で機敏かつ小型であり、事実上どこにでも移動することができます。
しかし通常の自律駆動型ドローンは、あらかじめインプットされた地図がなければ、未知の環境を飛行することができません。それゆえに、ドローンの可能性を最大限引き出すには、熟練した人間のパイロットが必要といわれています。
この課題を解決するため、Davide Scaramuzza氏率いる研究チームは、森林・建物・廃墟・電車など、未知の環境でも自律型ドローンを飛行させられるよう、AIアルゴリズムにトレーニングを実施。興味深いのは、ドローンに搭載されたカメラとコンピュータのみを活用して、飛行を成功させたという点です。ドローンは、最大時速40kmの速度を保ちながら、木・壁・その他の障害物に衝突することなく飛行したといいます。
最大時速40kmも可能それでは、どのようにトレーニングを行ったのでしょうか。同大学によると、複雑な障害物を配置したシミュレーション環境を体験させることで、学習を行ったといいます。ドローンに搭載されたAIアルゴリズムは、ドローンの状態やセンサーから読み取った情報を分析しながら、最良の軌道を見つけるために計算を行います。
シミュレーションの訓練を受けた後、ドローンのシステムは現場で実際にテストされ、様々な環境で時速40kmまでは衝突することなく飛行しました。 「人間が飛行技術を学習するための訓練には何年もかかりますが、高性能シミュレーターを活用するAIは、同等のナビゲーション能力をはるかに速く学習できます。一晩で達成することさえ可能です」と、研究チームのAntonio Loquercio氏はコメント。
この技術の応用はドローンに限定されません。同大学の研究チームは、同様のアプローチが自動運転車のパフォーマンスを向上させるのに役立つ可能性があるとしています。また「データの収集が困難または不可能な場所」、例えば他の惑星でAIシステムを操作するための鍵となる可能性さえあるといいます。
Flying High-Speed Drones into the Unknown with AI
(文・Takeuchi)