カーボンニュートラル達成への貢献が期待されるCO2地中貯留ですが、まだ実用での課題があります。その1つが、CO2注入に適した場所を見つける作業が複雑なことです。
CO2を注入しすぎたり、一定レベル以上の圧力をかけたりすることによる断裂やガス漏れ、地震の発生を防ぐために、現在は複雑で詳細な数値シミュレーションを走らせている状況。この方法には時間とコストがかかります。こうしたことからペンシルベニア州立大学の研究チームは、ディープラーニングを用いた迅速で安価な方法を開発しました。
アルゴリズムに物理学を組み込んで正確に研究チームはさまざまなシナリオで、正確な予測を行うべくアルゴリズムをトレーニング。深さ7500フィート(約2.3km)の貯留層のシミュレーションデータをもとにしたアルゴリズムは、CO2の過注入、過圧力による挙動を予測しました。
アルゴリズムに物理学を組み込むことで、不正確なデータによる精度の低下や過学習などデータ駆動型モデルの欠点に対処。地下の液体の自然な動きや質量保存の法則といった基本的な物理学の原則によってモデルに制約を与え、これに不一致が生じた際にはペナルティを付加して間違いの修正を促します。
トレーニングを実施していないサイトでも迅速に使える従来のデータ駆動型モデルでは貯留候補地ごとにトレーニングを要するのに対し、研究チームが製作したモデルはトレーニングを実施していない場所で使用しても正確な予測が可能とのことです。
注入オプションを選択すれば、CO2注入による挙動の予測が数秒で表示できるとの高速ぶり。このモデルを組み込んだリアルタイム予測システムが開発されれば、CO2地中貯留の候補地選定がスピードアップしそうです。
参照元:Physics-informed deep learning to assess carbon dioxide storage sites/ Penn State News
(文・山田洋路)