スイス連邦工科大学の研究チームは、「人間の脳から直接ロボットに命令を出すことができる」機械学習プログラムを開発したと発表しました。
患者の思考だけでロボットを動かす「念じただけで物を動かすことができる」というのは、サイエンスフィクションの定番ともいえる表現のひとつでしたが、スイス連邦工科大学の研究チームはこれを現実の世界で達成しようとしているようです。
同大学が開発したこの機械学習プログラムは、脳からの電気信号に基づいてロボットの動きをコントロールするのが特徴です。この発明により、四肢が麻痺状態にある患者がより多くの日常的な活動を自分で行えることが期待されています。
「このロボットの目的は、『麻痺した患者を助けること』ですから、話したり動いたりする必要のない、ユーザーとのコミュニケーション方法を見つけなければならなりませんでした」と同大学の学習アルゴリズム・システム研究所の所長であるAude Billard教授は話します。そこで同氏が行ったのは、「患者の思考だけでロボットの動きを調整する」アルゴリズムを開発することでした。
試行錯誤の中で学習このアルゴリズムは、患者の脳活動を計測するための電極が付いたヘッドキャップに接続され、脳波を計測することができます。患者はロボットを見るだけでこのシステムを使うことが可能で、例えばロボットが「間違った動き」をすると、患者の脳は「エラーメッセージ」を信号として発することができます。その信号はあたかも患者が「違う、違う」と言っているような感覚でしょう。
するとロボットは、自分のしていることが間違っていることを理解するのですが、最初はその理由を正確に知ることができません。例えば、対象物に近づきすぎたのか、遠ざかりすぎたのか。ロボットが正しい答えを見つけられるように、エラーメッセージがアルゴリズムに入力されます。そこから「患者が何を望んでいるか、ロボットがどんな行動を取るべきか」をロボットが認識できるようになるとのこと。
この「学習」は、ロボットがさまざまな動きを試して、どれが正しいかを確認する試行錯誤のプロセスで行われます。ロボットが正しい動作を理解し、患者の意思を実行するまでに必要な試行回数は、通常3〜5回とのこと。
Aude Billard教授は、「脊髄損傷者は、永久的な神経障害と重度の運動障害を経験することが多く、物をつかむといった最も簡単な作業さえも行えなくなります。ロボットによる支援は、これらの人々が失った器用さの一部を回復するのに役立つでしょう」とコメントしています。
Mind-controlled robots now one step closer
(文・Takeuchi)