ワシントン大学の研究チームは、人間が直接プログラミングしなくても、コンピュータのアルゴリズムが自ら改良する機械学習を活用することにより、「雷の予報」を改善できることを明らかにしました。
約2日早く雷を予測稲妻は自然界で最も破壊的なパワーのひとつと言われます。
実際、2020年には米国カリフォルニア州にて稲妻をきっかけとした大規模な山火事が発生しましたが、「いつどこに雷が落ちるのか」という予測は依然として困難。
この課題を解決するため立ち上がったのが、ワシントン大学准教授のDaehyun Kim氏率いる研究チームです。同チームが開発したのは、従来の天気予報と過去の雷の分析に基づく機械学習式を組み合わせた新しいプログラム。このハイブリッド手法は、従来の手法よりも約2日早く米国南東部の雷を予測することができるといいます。
降雨を伴わない雷なども予測へワシントン大学の研究チームは、2010年から2016年までの雷のデータでプログラムを訓練し、コンピューターに気象変数と稲妻の関係を発見させました。その後、2017年から2019年までの天候でテストを行い、AIの手法と既存の物理ベースの手法で比較、実際の雷の観測結果を用いて両者を評価しました。
AIの手法では、米国南東部など雷の多い地域で従来の手法よりも約2日早く雷を予測することができたといいます。一方、雷が少ない場所では精度が低くなるという欠点も見つかったのこと。それでもDaehyun Kim氏は、今回のAIによる予測方法は有利だと話します。「既存の方法は、2つの変数を掛け合わせるだけです。それは人間のアイデアから生まれたシンプルな手法で、必ずしもベストな予測方法とは言えません」。
「機械学習には多くのデータが必要であり、それはアルゴリズムが価値ある成果を上げるための必要条件のひとつです」と同氏。今後研究チームは、より多くのデータソース、より多くの気象変数、より洗練された技術を使って、予測の精度を改善したいとのこと。さらに、降雨を伴わない雷など、山火事にとって特に危険な状況の予測も改善していく予定です。
Artificial intelligence can create better lightning forecasts
(文・Takeuchi)