ドイツを拠点とするフラウンホーファーIOSB(オプトエレクトロニクス・システム技術・画像処理研究所)は、AIを用いた交通信号機のスマート制御を実現したと発表しました。
ドイツ連邦交通・デジタルインフラ省支援のプロジェクト車で通勤する人にとって、渋滞に巻き込まれてしまうほど憂うつなことはないでしょう。とくに、ラッシュアワーのピーク時には、青信号が続く中をスムーズに走り抜けるのは至難の業です。
そんななか、AIを活用して「スマートな信号切り替え」を行い、このストレスフルな状況を変えようとしているのが、ドイツのKI4LSAプロジェクト。同プロジェクトには、ドイツ連邦交通・デジタルインフラ省が資金を提供していて、複数のパートナー組織が参加しています。
プロジェクトメンバーであるフラウンホーファーIOSBは、従来の信号機が使うセンサーの代わりに、交差点に高解像度カメラとレーダーセンサーを設置。信号待ちをしている車の数や車の平均速度、待ち時間を長期間にわたって記録しました。そして、このデータをAIに学習させることで、信号の最適な切り替えパターンを探り、従来の信号切り替えによって生じる渋滞の解決を目指しています。
信号機の最適な切り替え動作を実現信号機のセンサーに実装するAIには、深層強化学習(DRL)アルゴリズムを用いています。
同研究所は、ドイツのレムゴー市の交差点を使ってシミュレーションを構築。仮想的に生み出した交通状況でさまざまな信号の切り替えパターンを実験し、どのパターンが最も待ち時間を短くできるかを調べました。
シミュレーションの結果、AIを実装した「スマート信号機」がある交差点では、普段に比べて交通の流れを10~15%改善できることが実証されたようです。とはいえ、このシミュレーションは仮想空間で行ったもの。研究所は現実世界の交差点では機能しない可能性があることを認めていて、今後数か月にわたって実際の交差点で信号機を動かすため、アルゴリズムを適応させていくとしています。
Traffic lights controlled using artificial intelligence
(文・Takeuchi)