嚥下機能(えんげきのう)とは、口の中で食べ物を飲み込みやすい大きさにして食道から胃へ送る一連の工程です。この機能は、病気や加齢により低下することがあり、食道へ入るべきものが気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」を引き起こす原因とも言われています。
従来の嚥下機能を評価する方法は簡単かつ継続的にできるものではなく、高齢者の嚥下機能評価は不十分な状況のようです。
そこでPST株式会社(以下、PST)とSOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPOホールディングス)およびSOMPOケア株式会社(以下、SOMPOケア)は、2020年7月から音声解析による嚥下機能評価技術の共同研究を開始。このたび高精度評価を実現する技術を開発し、2022年に事業化することを発表しました(共同で特許出願済み)。
スマホなどに発声するだけ、言語依存なし同技術は、ヒトの機能や病態の違いによる音声変化を解析・判定するPSTの「音声病態分析技術」をもとに開発。スマートフォンやタブレットに複数パターンの発声をするだけで、蓄積したデータをもとに嚥下機能の定量評価が可能となる技術です。
専門職の経験値や専用の機器を必要としないため、日常的な嚥下機能チェックが可能になるでしょう。
また、日々の機能推移を確認できるため、嚥下機能の低下を見逃さず最適な嚥下食への切り替え、専門的な検査へと進むことができるといいます。
なお、「音声病態分析技術」は言語に依存しない解析技術のため、海外での展開にも期待が寄せられているようです。
開発背景には誤嚥性肺炎の増加が同技術開発の背景には、誤嚥による“誤嚥性肺炎”の増加があります。厚生労働省によると、2020年の誤嚥性肺炎による死者は4万人を超え、日本人の死因順位6位となったようです。
これまで、誤嚥の原因とされる嚥下機能低下を評価するには、「摂食嚥下障害認定看護師」や「言語聴覚士(ST)」による飲水・摂食時の状態評価、内視鏡での観察、造影剤を含んだ食品を飲み込みX線照射による観察などが一般的でした。
しかしこの方法には、医療機関へ行かなくてはならないことや摂食嚥下障害認定看護師などの不足という課題が。そのため、嚥下機能評価が不十分という状況が生まれ、嚥下食の進歩むなしく最適な嚥下食提供ができていないというわけです。
そんななか開発された同技術は、手軽かつ継続的に嚥下機能を評価可能。これまでの課題を一気に解決し、高齢者など嚥下機能低下を注視したい人にとって心強い技術となりそうです。
今後、PSTはさらなる研究開発を進め、さまざまな事業体への提供を予定。SOMPOホールディングスおよびSOMPOケアは、介護サービスにおける事業化や技術活用のノウハウやサービスを含めた幅広い場面での利用を目指すとのことです。
PR TIMES
(文・Higuchi)