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フルリモート組織でもオフィスは必要!ベンチャー社長が語るコロナ後のオフィス論

Techable 2023年1月30日 17時0分

本記事は株式会社ニットの代表取締役社長秋沢崇夫氏にご寄稿いただいたものです。

フルリモート組織があえてオフィスを持つ理由

リモートワークが普及し、在宅勤務やサテライトオフィス勤務など、場所にとらわれない働き方が一気に加速しました。

多くの業務がリモートワークで完結できることを知った今、「そもそもオフィスは本当に必要なのか?」「オフィスを有効活用するにはどうすればいいのか?」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU(ヘルプユー)」を提供する当社・株式会社「ニット」は、完全リモートワークを前提に2015年に創業しました。サービス提供、事業運営はすべてフルリモートで行っていますが、当社は東京にオフィスも構えています。

リモートワークの浸透によりオフィスを持たない会社もある中、完全リモートワークであるニットがあえてオフィスを持ち続けるのには理由があります。

オフィスは単なる作業場ではない

それは、オフィスを「単に業務をする作業場」としてではなく、「組織にとって重要な役割を担う場所」であると考えているからです。私たちが考えるオフィスの役割は以下の4つの通りです。

①企業のビジョンやミッションの浸透

一つの組織で働くうえで、会社が目指すビジョンやミッションの共有は欠かせません。企業が何を目指し、今何に注力しているのかをメンバーが理解してこそ、パフォーマンスの最大化につなげることができます。

オフィスはその方向を示す存在として、企業理念や経営戦略などを発信したり、体感できたりする場所であるべきでしょう。

②メンバーのコミュニケーション円滑化

業務の中には、リモートではなくメンバー同士が集まり対面で行った方が効率がいいものもあります。たとえば、「新規事業の会議」「ブレストする会議」「キャリア面談」など。これらは、何気ない会話の中から、新しいアイデアやヒントが生まれてくることが多いものです。

メンバー同士が共に過ごすオフィス空間を設けていれば、そのようなコミュニケーションが自然と生まれます。そのためにも、オフィスはメンバーが自発的に「行きたい!」と思う空間にすることが大切です。

③対外的な信用価値向上

社外の方との打ち合わせ場所や、資料などの送付先、連絡先情報としてなど、事業を運営するうえで、固定オフィスの存在は有益です。また、採用においても、オンライン面接では伝わりづらい社内の雰囲気を、オフィスがあれば感じてもらうことができます。

ニットでは、最終面接や内定通知をオフィスで行うことで、社内の雰囲気や空気感を伝えています。それにより、企業としての信用度が増せば、面接者の入社動機の一因にもなり得ると考えているからです。

④自由な働き方の象徴

オフィス自体を、多様な働き方や、働きやすさのシンボルとすることもできます。

リモートワークだけではなく、「オフィス出社」という選択肢があることは、より柔軟な働き方を可能にします。「今日は人と会って仕事がしたい」「この業務はメンバー同士が対面で進めた方が効率的だ」など、自分の状況に合わせて働き方を選択できるようになります。

オフィスをどう活用すべきか

先述のように、当社・ニットは東京にオフィスを構えています。日によってメンバーが変わるものの、4、5人ほどがオフィスで仕事をしています。空港からのアクセスも良好で、海外メンバーが帰国した際には、オフィスに足を運んでくれることもあります。

ニットのオフィスでは、フリーアドレスはもちろん、オンライン商談に最適な個別ブース、くつろげるリラックススペースを設置し、それぞれが仕事をしやすい環境を作りました。

オフィスの入口付近の壁には当社のビジョン・バリューを掲げ、企業理念のメンバー間での浸透を意識した設計にしています。

ただし、オフィス出社とリモートとのハイブリット勤務の場合には注意すべき点もあります。それは、情報量の格差を発生させないことです。

ニットは基本的にフルリモートで事業運営を行っています。オンライン会議をやる際は、オフィスにいるメンバーもみなオンラインでつなぐことで、オンライン⇔オフラインでの情報量の格差が発生しないような配慮をしています。

また、新人の場合は社内での関係性がまだ構築できていないため、ちょっとした相談がしづらいものです。そのため、「入社半年間はオフィス出社」など、一定のルールを設けるのも一つの策です。

出社して社長や同僚と顔を合わせ、そこから生まれる他愛のない会話により、心理的安全性も高まるでしょう。

さらに、同じ空間にいる先輩の営業電話を聞けたり、同期と悩みを共有できたり、「偶然の副産物」を得る機会がオフィスにはたくさんあります。その結果、メンバーの会社へのエンゲージメントが高まり、結果的に会社の成長スピードが早くなることが期待できます。

リモートワークの落とし穴

以上、当社が考えるフルリモートでもオフィスを持つことの役割とその活用事例についてご紹介しました。とはいえ、フルリモートを前提に創業した当社では、約500人のメンバーが日本全国・世界各国から業務にあたっているため、リモートワークが基本です。

また、ニットだけではなく、今や多くの企業が導入しているリモートワークですが、そこには見逃せないデメリットも潜んでいます。

①コミュニケーション不足に陥りやすい

対面であれば自然に生まれる仕事に関する些細な相談や、仕事以外の雑談が、リモートワークでは取りづらくなります。つまり、メンバーが抱えている問題に気づきにくくなるのです。

さらに、メンバー間の様子が視覚的に見えないことで、チームワーク・士気の低下を招くこともあるでしょう。

②他部署との連携が希薄になりやすい

オフィス勤務でも問題視されることもある他部署とのコミュニケーションの課題が、リモートワークではさらに深刻化する恐れがあります。

時間・場所が非同期で働くことが増え、他部署との情報収集の重複、情報共有の遅延、それによる決裁の遅れなど、仕事のスピード低下につながることも否めません。

フルリモートでもコミュニケーションを加速させるには

これらのデメリットを解消するために、メンバー同士のつながりを感じられる取り組みをニット/HELP YOUでは積極的に実施しています。そしてその取り組みの成果により、コミュニケーションの活性化に成功し、数々の賞を受賞してきました。

次回は「フルリモートでもコミュニケーションを加速させる」具体的な方法をお伝えしていきます。

<著者プロフィール>

秋沢崇夫
株式会社ニット
代表取締役社長

1981年東京都生まれ。青山学院大学卒業。2004年株式会社ガイアックスに入社し、営業、事業開発に関わり、営業部長に。32歳で退職後、一人旅の最中にリモートワークを経験。「このスタイルであれば場所や時間にとらわれることなく自分らしい生活を実現できる」と実感し、さまざまな働き方や生き方の選択肢があってもいいのではないかと考えるように。帰国後「多くの人の働く選択肢を増やしたい」との思いからオンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を立ち上げる。

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