キャプテラは、量子コンピュータ企業現役CEO3名へインタビューを行い、量子コンピューティングの現状と展望のまとめを公開しました。
「量子アニーリング」で、ものづくりが加速大規模な組み合わせ最適化問題を解く技術として「量子アニーリング」に注目が集まっているそうです。
すでに実用化も始まっているこの技術の普及で見込める成果を、株式会社Quemix (キューミックス))の松下雄一郎代表取締役CEOは以下のように予想しています。
一方、blueqat (ブルーキャット) 株式会社の湊雄一郎代表取締役社長は、日本の技術力については「世界の中ではトップクラスに優位な立場にあり、物理学が強い国ともありビジネスチャンスは多い」としながらも、さらなる勢いを確保する必要があることを指摘しています。
量子通信や暗号、量子ソフトウェア開発などに力を入れている日本ですが、今後さらに競争が激しくなるこの分野において、官民ともに積極的に取り組む必要がありそうです。
あらゆる分野での実用化を期待する中で…特定の問題に対して効率的な最適解を見出すことのできる量子コンピュータは、エネルギー消費を抑えられるというメリットがあるため、電力共有不安の時代では重宝されるようです。
すでに量子コンピューティングが実用化されている分野がある中、今後は暗号技術や金融などのシミュレーション、素材や薬の開発、機械学習などの分野での活用が期待されています。
blueqatの湊氏は、あらゆる業界にチャンスがあると見ている一方、各分野のドメイン知識を用いて量子コンピュータを実用化できる企業が大きく不足していることを指摘しています。
中小企業が今から準備するべきこと3点量子コンピュータの変革がもたらされる前に準備するべきことは次の3点。
人材の確保
Quemixの松下氏は、最適化を自社できちんと行う場合は「自分たちで研究者や、それなりの知識を持った人 (数学者、理論物理学者、理論化学者)を社内の中で確保する必要がある」と指摘しています。
情報収集と動向の把握
blueqatの湊氏によると、現在は他社動向や情報収集が非常に大事な時期であり、日々生まれる量子のニュースに目を通すことを推奨しています。また、「量子教育に際してのビジネス応用の方法を段階を経て会得するためのセミナー」が増えている一方、「今後は専門的な知識は不要でノーコードなど、量子の知識がなくても恩恵が受けられるインフラ作りが可能になる」と展望します。
経営陣の積極的な関与株式会社グルーヴノーツの最首英裕氏は、海外と比べて日本には量子技術に取り組むユーザー企業が少ないことを指摘しています。
量子技術に取り組む際の注意点量子技術に取り組む際にはいくつかの課題があります。3人の挙げる特に注意すべき点を紹介しましょう。
blueqat 湊氏
「量子技術の習得に関しては教育が重要で、技術的な習得とビジネス面での応用の二つがあり、この二つを両立させられている企業は多くありません。業界で増えているそのような応用セミナーをぜひ活用してください」
Quemix 松下氏
「量子コンピュータと古典コンピュータには、それぞれ得意不得意があります。原理的に量子コンピュータに向いていないのに、量子技術を使ったアプリもありますので、その点は注意してください」
グルーヴノーツ 最首氏
「量子コンピュータは、あくまで一つのツールに過ぎないのです。馬車しかなかった時代にトラックが登場しても、トラックの構造や製造工程に精通している必要がなかったように、量子コンピュータが社会にどのような本質的な価値をもたらすのかというところに目を向けるべきです」
量子コンピュータの変革に備えよう本格的な実用化はまだこれからという状況ですが、量子コンピュータは遅かれ早かれ破壊的な変革をもたらすといいます。
キャプテラは「専門知識を持った人材の育成や、量子技術を応用した新たなビジネスモデルの構築など、今後の進展や技術の進化に対応するためにアンテナを張って注目していただきたい」と語ります。
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000112974.html
(文・zio.)