“陸”に比べて活用が進んでいない“空”での移動を担う新モビリティとして世界で注目されている「空飛ぶクルマ」。都市部での渋滞緩和、CO2排出削減といった社会課題の解決に寄与するものとして期待されています。
今後、空飛ぶクルマは、全世界的に普及していくことが予測されており、2040年までに、その市場規模は約160兆円規模になると考えられているとのこと。
日本では「空の移動革命に向けた官民協議会」を中心に、2025年の大阪・関西万博をひとつのマイルストーンとして、空飛ぶクルマの社会実装に向けた官民一体となった取り組みが進められています。
そこで今回は、昨今の空飛ぶクルマに関する飛行試験の内容を通じて、海外の動向、そして日本での動向について紹介します。
米・ASKA社が空飛ぶクルマの安定した空中停止飛行に成功2023年8月、米国カリフォルニアに本社を置くエアモビリティ会社のASKA社は、 空飛ぶクルマ「ASKA A5」のフルスケール実機が初飛行に成功したと発表。
同実機がテザーケーブルで地上に繋がれた状態で垂直離陸をし、安定した空中停止飛行(ホバリング)を30秒ほど行ったといいます。
世界初の陸空両用の空飛ぶクルマとされるASKA A5は、パイロット1名、乗客3名の4人乗りで、ヘリコプターのように垂直に離陸、小型飛行機のように飛行する乗り物です。
翼を格納するとSUVほどの大きさになり、公道を走るとともに通常の駐車場に機体を駐車することが可能。離陸後の飛行航続距離は250マイル(約400キロメートル)、最高飛行速度は時速150マイル(時速約240km)です。
なお、ASKA A5は米国DMV(自動車管理局)よりナンバープレートを取得し、地元シリコンバレーの公道において300マイル以上(約480km)のテストに成功しています。
ASKA社の共同創業者兼会長のカプリンスキー真紀氏は「世界初の本物の空飛ぶ車の実機によるホバリング飛行の成功は我々の5年間以上の技術開発の成果です。今後も(中略)安全な飛行試験を着実に行い、次のステップである垂直離陸およびホバリングのさらなる最適化、水平飛行、そして滑走路からの離着陸へ向け前進します」とコメントしています。
参考元①:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000126207.html
参考元②:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000126207.html
沖縄県の離島間で海上含む2地点間の飛行に成功日本では、空飛ぶクルマをはじめとする“次世代のエアモビリティ”の供給源となるインフラを構築する株式会社AirX(以下、AirX社)と、その連携企業が空飛ぶクルマの試験飛行に注目が集まっています。
2023年6月、AirX社は株式会社日本空港コンサルタンツ、株式会社 建設技術研究所、空港施設株式会社と共同で沖縄県伊平屋島での空飛ぶクルマの試験飛行を実施し、成功したと発表。
飛行試験では、AirXが所有する空飛ぶクルマの「EHang216」が、沖縄県伊平屋村 米崎キャンプ場〜海を隔てた野甫港までの海上2地点間を飛行。飛行距離は往復約2kmとなりました。
AirX社によると離島間の移動を目的とした実証は国内初で、海上を飛行して2地点間を移動する試験飛行の成功は国内のみならず、アジア初であるとのことです。
これまでの飛行試験は、限定的なエリアの中でのものでしたが、今回の試験飛行は離島などにおける本格実装に向けた一歩となるでしょう。
今後も、世界・日本での社会実装に向けた空飛ぶクルマの飛行試験の動きについて注目していきたいところです。
参考元③:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000028531.html
(文・Haruka Isobe)