現代社会では、“職場環境によりメンタル状態が悪化し、仕事が続けられない”というケースが増加しているといいます。
本記事では、従業員のメンタル不調に対する早期対策に役立てられる、AIを活用した法人向けメンタルヘルスケアサービスを紹介します。
メンタルヘルス不調による休職・退職をAIサービスで解決厚生労働省の労働安全衛生調査(令和2年度)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合が9.2%と発表されており、多くの労働現場において深刻な問題となっていることがわかります。
また、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に健康であること)や予防医療の高まりも相まって、企業の健康経営がますます重要視される一方で、「適切にサポートするためのリソースが足りない」といった人材不足の課題も浮き彫りになっている様子。
加えて、日本では個々の心理的な問題について話すことを恥ずかしく感じる文化が根強く、相談窓口の利用率も低いという課題もあるようです。
このような背景から、昨今AIを活用した法人向けメンタルヘルスケアサービスに注目が集まっています。ここでは6つのサービスを活用方法・特徴とともに紹介します。
出退勤打刻や業務中の対話を活用できるサービス3選 顔写真からモチベーションを見える化する「ZooMe Checker」
中日本コミュニケーション株式会社が販売する「ZooMe Checker」は、顔写真からモチベーションを「見える化」することで、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐAIメンタルヘルスケアシステムです。
従業員が顔写真を日々記録し、心理カウンセラー監修の独自AIシステムが顔写真からモチベーションの変化を可視化。管理者は従業員一人ひとりの変化を把握し、感情の落ち込みに対して迅速にケアを行うことで、メンタルヘルスの不調を未然に防ぎ、生産性の向上につなげます。
同ツールでは毎日の出退勤打刻はもちろん、シフト管理や日報登録まで簡単な操作で管理可能。従業員の勤怠管理と同時に、心の健康管理までサポートすることができます。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000058200.html
公式サイト:https://zoome-checker.jp/
ウェルヴィル株式会社が提供する「LIFE TALK ENGINE」は、人の問いかけや発話に対し、意味を理解して自然に応答するAI対話エンジン。
PST株式会社が提供する「音声病態分析感性制御技術」と連携した機能により、業務中の対話を利用してその音声を分析し、個人の元気圧や活量値を継続的に測定して状況を認識します。ユーザーの声から心の状態や病気を把握し、現在の体調を読み取ることによって、健康な生活を維持するためのアドバイスなどを行っていくことができます。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000066680.html
公式サイト:https://wellvill.com/lifetalk/
株式会社クロスキャットが運営するクラウド勤怠管理システム「CC-BizMate」では、株式会社Empathが開発した音声感情解析AI「Empath」を活用したメンタルヘルスケアソリューションをオプションサービスとして提供しています。
同サービスでは、日々の出退勤打刻時の音声から、AIによって社員のメンタル変調を予測。高ストレスが続いている社員に対し、声かけや面談、職場環境を改善するなど、迅速にフォローすることで社員のストレスを緩和するための適切なメンタルヘルスケアを実現します。
Empathでは数万人の音声データベースをもとに、声の特徴から人間の感情を解析し、喜怒哀楽や気分の浮き沈みを判定。言葉の意味や内容ではなく、声のスピード、抑揚、トーンなどの物理的な特徴から機械学習による感情を推定するため、日本語以外の言語でも解析することが可能です。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000111.000025288.html
公式サイト:https://cc-bizmate.jp/
株式会社Medi Faceが提供している「Mente for Biz」は、社員のメンタルを『AIによるチェック』と『プロ人材によるケア』の2ステップでサポートするクラウドサービス。AIメンタルチェックの結果に応じて、必要な分だけプロ人材によるケアにつなげます。この2ステップでアプローチすることにより、人事の負担減・コスト抑制を実現します。
「AIメンタルチェック」は、24時間365日利用可能。PC・スマートフォンの画面上に登場する「AIドクター」からの質問に回答するという対話形式で、いつでも従業員が自分のタイミングかつ自分のパーソナルスペースで、自身のメンタルをチェックすることができます。
現役医師らの監修によって開発したAIを用いており、表情、声、話し方などの非言語情報をデバイスのカメラ・マイクを通して取得することにより、精度の向上を図っています。
また新入社員のための特化型パッケージも用意されており、初めての社会人経験や、配属地による孤独感などにフォーカスしたサポートも可能。このほか、部署ごとのメンタル傾向やメンタルスコアなどの分析を行うこともできます。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000080422.html
公式サイト:https://medi-face.jp/
キリハレ株式会社が提供する「KIRIHARE AI & HR」は、AIを活⽤したハラスメント相談窓⼝と⼼理カウンセリングで従業員の心理的安全性の維持をサポートするサービス。2023年6月より、新たなサービスとして「AIカウンセリング」および「AIハラスメント診断」をリリースしました。
同サービスでは、AIによるカウンセリングを無制限で利用でき、より深刻な問題については有料でプロのカウンセラーへ相談することも可能。またAIハラスメント診断では、従業員がハラスメントについての不安や疑問を24時間いつでも相談できます。なお社労士の回答と99%一致する精度のAIを利用しているとのこと。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000120508.html
公式サイト:https://eap.kirihare.jp/
emol株式会社では、従業員のこころのケアを促進するデジタルセルフケアプログラム「emol for Employee」を法人向けに展開。AIとのチャット会話を通じて、認知行動療法に基づいたメンタルセルフケアを実践します。
セルフヘルプ*には、人的リソースがかからない、好きな場所で行える、コストの削減など多くのメリットがあり、予防や未病者へのメンタルヘルスケアのみならず、精神疾患治療の領域でも注目を集めているといいます。
従業員一人ひとりがアプリ上でセルフヘルプセッションを実施し、こころの健康の保持・増進のスキルを身につけることで、組織全体のウェルビーイングの実現を目指します。
*セルフヘルプ…専門家の助けを借りず、自身の問題を当事者で解決すること
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000043787.html
公式サイト:https://emol.jp/employee
過度なストレスはモチベーション低下とメンタルヘルス不調を引き起こし、人材の流出にもつながります。従業員が不安や疑問を持った際に“気軽に相談できる”といったAIのメリットを生かし、社員のメンタル不調を早期に発見できる環境を構築することで、人材の定着にもつながりそうです。
(文・Tsunoda Maiko)