インドでクレジットカードの支払いを一括管理するサービスを展開しているCREDが、2023年度の年間売上が148億ルピーであることを発表した。
2022年度の売上は42億ルピーであるため、わずか1年で売上が3.5倍増加したことになる。しかし依然として赤字が続いており、現時点では売上1ルピーを得るために2.02ルピーを費やしている。
支払いを一括管理できるサービスを提供CREDはKunal Shah氏によって2018年に設立されたスタートアップ。PeakXV、Ribbit Capital、Tiger Globalなどから資金調達を行い、2021年には評価額10億ドル以上・設立10年以内の企業を指す“ユニコーン企業”となった。
同社は主にクレジットカードや家賃、教育費、保険料、電話料金などの支払いを一括管理できるサービスを提供している。
付随するサービスとして会員のクレジットスコアの測定、クレジットカード決済内容のカテゴリー別分析、クレジットカードの請求引き落としの延長などもサポート。さらには金額に応じてポイントを付与するサービスや、車両サポート、後払い(BNPL)、UPI*決済、さらに最近では個人間で融資を可能とするプラットフォームの提供まで、サービスの内容は多岐にわたる。
*UPI…Unified Payments Interface(統合決済インターフェース)の略。銀行間のピアツーピア(P2P)取引や個人間取引(P2M)取引を容易にするインターフェースを指す。
クレジットスコアに伴う課題を解決インドにおいて「クレジットカードスコア」は重要な意味を持つ。
クレジットスコアは、クレジットカードを使った支払い履歴のほか、実際にいくら借りたか、クレジットカードを使用してどのくらい経つかなどを定量的に分析して算出されるが、インドではこのクレジットスコアが一定の水準を超えていないと、さまざまな問題が発生する。
たとえば、ホームローンの申請が認められない。また認められた場合でも、ホームローンの金利が高く限度額が限られるなどが起こりうる。
クレジットスコアを良好に保つために大事なことは支払い期日を守ることだが、インドでは自動引き落とし金額の上限が15,000ルピーと決まっており、その上限を超える場合は自身で手続きを行う必要がある。この手続きが遅れてしまうとクレジットスコアに傷が付く。
こういった課題を解決するサービスを提供しているのがCREDだ。
インドの決済インフラ「UPI決済」なかでもCREDのUPI決済は、後発でありながらPhonePe、Google Pay、Paytmに次ぐ第4位のシェアを獲得している。
UPI決済とは、インドの決済インフラとも位置付けられる送金・支払いの手法であり、スマートフォンから簡単に相手へ送金できるシステムだ。異なる金融機関の間でもリアルタイムで送金できるなど、高い利便性が魅力である。
UPIを制する者はインドを制すCREDはインドを代表するユニコーン企業の1社だが、クレジットカードの支払いを一括管理するだけでは盤石なビジネスモデルとは言えない。
インドにおけるクレジットカードの発行枚数はようやく1億枚に達しようとしているが、UPI決済は既に3億人が使用する最も人気な決済手段となっている。
UPIが人気を集める理由は、シームレスな決済を実現していることが挙げられる。インドには沢山のUPIを利用したアプリがあるが、それらは銀行と紐づいており、どのアプリ間でもQRコードや電話番号があれば送金や支払いが出来る。
つまり日本と違い、すべてのサービスが根本の部分で統合されており、アプリに関係なく自由に横断が可能となっているのだ。
このシステムはインドで開発され、日本を含めた他国からも参加の検討が始まっている。
UPIが優勢になればクレジットカードの使用頻度はおち、CREDの成長性に陰りを落とすことになりかねない。クレジットカードの支払いを一括管理するサービスで集めた顧客に対して、さまざまなサービスを提供するCREDの戦略は上手くいくのか、世界が注目するユニコーン企業CREDに注目が集まる。
CRED
文:はっさく(@hassakumacro)