北海道千歳市にある日本最北の不凍湖、支笏湖(しこつこ)は、景色が鏡のように水面に反射する“鏡面現象”で人気の観光地。しかし、5~7月の期間は観光客が減少傾向にあるという課題を抱えている。
また鏡面現象の成立には明確な基準が存在せず、それまで現象が発現したか否かは主観で決定がなされていないという。そこで今回、公立千歳科学技術大学 曽我研究室は「機械学習による支笏湖の鏡面現象予測」を実現するアプリを構築した。
短期間でアプリ開発が可能な「Claris FileMaker」曽我研究室では、文部科学省が推奨するアクティブラーニングを実践。学生は地元企業や公共機関などに実際に足を運び、地域の人々と連携して課題を見つけ、それを解決するためのサービスの企画、提案、システム構築を行うPBL(課題解決型学習)を通して学びを深めている。
同研究室は、ローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」をPBLの推進に採用。このプラットフォームは、米国カリフォルニア州に本社を置くClaris International Inc.が提供しているもので、Apple提供の機械学習モデル作成ツール「Create ML」との連携が可能だ。パフォーマンス、信頼性、拡張性が高いカスタムAppを作成でき、より短期間でアプリを開発できる。
支笏湖の鏡面現象を予測するアプリを構築曽我研究室は今回、支笏湖の課題解決をするため、現地に設置したカメラや気温・風速・気圧を測定するセンサーの情報から「現在鏡面現象が起きているか・将来起きるか」を予測するカスタムAppをClaris FileMakerで構築。
この取り組みでは、Create MLを活用し、Appleのデバイス上でAIを高速かつ省電力で実行する「Core ML」を作成。Core MLはiPhoneやiPadがネット圏外でも利用可能で、高速に処理できる。またClaris FileMakerと組み合わせることで、簡単にアプリとして実装できるため、学生は短期間でさまざまな課題に取り組めるという。
支笏湖の鏡面現象予測アプリでは、過去の鏡面現象の発生頻度などの情報提供や、実際の鏡面の発現をリアルタイムで通知する機能も実装しており、観光客の集客にも寄与している。
桜の開花予測・バスの混雑度予測などの研究も実施このほか、曽我研究室の卒業研究では、桜の開花予測や学生が利用するシャトルバスの混雑度予測、地元企業の古資料のデジタルアーカイブ化など、Claris FileMakerとさまざまなテクノロジーを組み合わせた研究を実施。
4月の研究開始から研究成果の発表まで、わずか10か月という短期間で、地域の課題発見からヒアリング、企画、システム構築、ユーザテストと実装したアプリの改良までを行っているのが驚きだ。今後も同研究室のPBLの取り組みに注目していきたい。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000053419.html
(文・Haruka Isobe)