2023年9月、イスラエルのスタートアップShchackimの創設者が、これからのIT教育の展望と課題について語った。同社はイスラエルで2016年に設立されたEdtech企業。創設者は、姉弟のIdo Deutch氏とShani Daniel氏だ。
Shchackimには精鋭のインストラクターが所属しており、教育サービスを広く展開。生徒はオンラインでプログラミングなどの“ハイテク教育”を受けることができる。
現在、同社サービスの累計生徒数は6,000人を超え、人気のコースはMinecraftを用いたプログラミング学習だという。
対象は小学生から若者までとされているが、労働者向けのコースを提供する「Horizon Labs」も2022年に設立された。
今回、姉のShani Daniel氏の言葉で印象的なのは、事業に対する信念だ。同氏は「子どもと教育は私の人生のすべてです」「教育への投資が、自分の子どもたちとイスラエルの子どもたちに与えられる贈り物」と語っている。また、「子どもたちよりも、教師のほうがこの仕事を愛している」とも述べた。
IT教育は高年収への近道なぜIT教育が子どもたちへの「贈り物」となるのか。それには、イスラエルのIT事情が関連しているようだ。
イスラエルはサイバーセキュリティ大国とも呼ばれている。2010年には、アメリカと共同でイランの核施設のシステムを狙ったマルウェア「Stuxnet(スタックスネット)」を作成したことでも話題となった。
イスラエルでは男女ともに18歳から兵役が始まる。そこでIT技術を扱う技術部隊に配属されると、就職で有利になるという。競争を勝ち抜き、ITの研究・開発職に従事すると、平均月収は30,791シェケル(日本円で約123万円)となるそうだ。この金額はイスラエルの最低賃金の5倍以上、平均賃金の約3倍とされる数字である。
早期からIT教育に取り組むと、技術部隊へ配属される確率も高まるだろう。その経験は、IT企業への就職にも役立つ。IT企業では高年収を得られるからこそ、Shani Daniel氏はIT教育を「贈り物」と称したのかもしれない。
需要増に伴い、人材不足が課題に姉弟は、ShchackimとHorizon Labsの需要はさらに高まると考えている。弟のIdo Deutch氏は「AIコースへの需要は500%ある」と語った。その背景を受け、今後はイスラエルだけでなく、アメリカ、イギリス、ラトビア市場への事業拡大を構想しているそうだ。
一方で、課題もある。教師の人材不足だ。ITを指導できるビジネスパーソンは、教育に従事するよりもIT企業で働くことを選ぶ傾向がある。そのほうが高給だからだ。
また、政府からの指針(シラバス)が充実していない点も課題として挙げている。同社では、こういった課題解決にも取り組む考えを示しており、今後の状況改善に期待したい。
Shchackim公式サイト:https://www.shchackim.co.il/
(文・山田)