ソフトバンクビジョンが投資するインドのユニコーン企業FirstCryがIPOを予定しているが、IPOに先立ち同社に投資していたソフトバンクビジョンが3.1億ドル相当の株式を売却した。
売却先はインドで大人気のスポーツ、クリケットの神様と評される有名プレイヤーSachin Tendulkar氏やインド有数企業Infosysの創業者Kris Gopalakrishnan氏などとされる。
FirstCryへの投資は大成功FirstCryはSupam Maheshwari氏とAmitava Saha氏によって2010年によって設立。主にベビー・キッズ用品を販売するe-コマースの大手だ。現在はオンラインでの販売だけでなく、インド全国にオフラインの店舗を構えている。
FirstCryにはChiratae Ventures、SAIF Partners、Valiant Capital Partners、Vertex Venturesなどが投資を行っていたが、2020年にソフトバンクが約4億ドルの投資に行い、評価額10億ドルを超えるユニコーン企業の仲間入りを果たした。
現在FirstCryの評価額は35億ドル~37.5億ドル程度になることが見込まれており、ソフトバンクが投資した時の評価額と比べて大きく上げている。そのため今回の3.1億ドルの株式を売却してもなお、ソフトバンクは8億~9億ドル分のFirstCryの株式を所有しており、FirstCryへの投資は大成功といえる。
インドのスタートアップ企業への投資は“冬の時代”を迎えているインドは世界で3番目に多いユニコーン企業を抱える国とされており、その数は2022年時点で100社を超える。日本のユニコーン企業数は10社以下とされるため、その数は実に10倍近い。
一方で、最近インドのユニコーン企業を含むスタートアップでは資金調達の際に自社の評価額を下げる“ダウンラウンド”が頻発している。例えばインドの代表的なユニコーン企業であるBYJU'SやMeesho、PharmEasy、Swiggyなどもダウンラウンドを行い、そこに投資していたベンチャーキャピタルは多額の評価損を計上している。
もちろん、求められる期待や成長性に見合わなかったことがスタートアップのダウンラウンドの要因ではあるが、ユニコーン企業を多く輩出した2021年や2022年はビジネスの妥当性より企業の持つ壮大なビジョンなどをベンチャーキャピタルが高く評価し、必要以上の評価額となってしまった弊害とも言える。
そのため、現在インドのスタートアップ投資に対して懐疑的な視線が向けられるようになり、2023年はスタートアップ冬の時代と言われるほどに投資額が減少している。
ソフトバンクビジョンファンドも例外ではく、2023年はインド企業にはほとんど投資せず、これまで投資してきたPayTMやLenskart、そして今回のFirstCryなどのインド企業の株式売却を進めている。
加熱するインド経済とは裏腹に冷え続けるインドスタートアップ、冬の時代はいつ明けるのか。
文・はっさく(@hassakumacro)