アフリカ大陸におけるAI技術の進歩は、新たな展望を多くの国々にもたらしている。その中でも、チュニジア発のAIディープテック企業「InstaDeep」は、その先駆的な存在である。
チュニジア発AIディープテック企業InstaDeepInstaDeepは2014年に、チュニジアの首都チュニスで設立された。創業者の一人であるKarim Beguir氏はチュニジア南部出身で、パリとニューヨークで応用数学を学び、ニューヨークとロンドンで数学者として10年以上の経験を積んだ。
彼はジャスミン革命後の新しいチュニジアで、AI技術を活用して国際的な挑戦に立ち向かう企業を創設することを決意したという。
2020年時点で、InstaDeepはチュニス、ロンドン、パリ、ナイロビ、ラゴスにオフィスを展開し、多国籍の85人以上のスタッフを擁している。InstaDeepは、ディープラーニングや強化学習などの最先端技術を駆使して、企業の問題解決に取り組んでいる。
意思決定を支援する“AIシステム”の構築InstaDeepの主要事業は、企業の経営プロセスにおける複雑な意思決定を支援するAIシステムの構築だ。主要顧客は主に欧米の大手企業で、特にドイツ鉄道にAIシステムを導入したプロジェクトは高い評価を得ているという。
また、InstaDeepが開発した世界初の完全AI駆動のプリント回路板ルーター「ディープPCB」は、アフリカの才能が国際的な舞台で成功できることを証明している。
この技術は、高度な最適化問題を解決するためのディープラーニングアルゴリズムを用いており、製造業界における効率と精度の向上に大きく貢献している。
AI人材育成への取り組みInstaDeepは、高度なAI技術者を育てることにも力を注いでいる。2019年にGoogleとチュニジア政府の支援を受け、中東・アフリカ地域で最大規模のAI関連イベント「AIハッカソン・チュニジア2019」を主催した。
このイベントは、地域の若手技術者たちにAI技術の実践的な経験と国際的な視野を提供。同社の技術者は多様性に富んでおり、半数以上が女性で、国際色豊かなチームが形成されている。InstaDeepは、このような多様なバックグラウンドを持つ人材を育成することで、AI技術の革新を推進している。
日本企業との提携の可能性は?InstaDeepは主に欧米企業との協力に焦点を当てているが、過去には日本企業との提携の可能性を示唆するコメントを残している。ロジスティクスの効率化などの分野での協力が見込まれ、日本企業に新たなビジネスチャンスをもたらすと期待されている。
InstaDeepの技術は、製造業や物流などの分野でのデータ駆動型の意思決定を強化し、効率的な業務運営を支援する。日本企業との提携は、両国間の技術交流を促進し、新たな市場機会を創出するものとなるだろう。
参考・引用元:
InstaDeep 公式サイト
DeepPCB 公式サイト
文・Alley(有吉隆浩)