2015年の設立以来、アジアの物流をあっという間に席巻したインドネシアの物流サービスJ&T Express。国をまたいだシームレスなサービスとテクノロジー主導のロジスティクスにより急速な成長を遂げ、東南アジア各国および中国、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプト、ブラジル、メキシコなど13か国に事業を拡大した。
国内はもちろん国際的プレゼンスをすでに確立していた同社だが、2023年は国内外から改めて高い評価を受けた一年となった。まず、6月にインドネシア国内で宅配サービス部門「Top Brand Award」を受賞。オフラインおよびオンラインで全国の一般消費者合計1万1900人を対象に行われた調査に基づくもので、利用者からの厚い支持が反映された賞である。
9月にはサウジアラビアで「Best New Last Mile Delivery Company」および「Most Innovative Express Delivery Service Provider」をダブル受賞。最も重要とされる最後の配送区間「ラストマワンイル」での傑出したサービスが評価された。
スマホメーカー「OPPO」のDNAがスマート物流のカギここまでの短期間でJ&Tが急成長できた理由は何なのか、同業他社と何がどう異なるのだろうか。
そもそも「J&T」は、「ジェット&トニー」の意味。ともに中国人である創業者2人の名前の頭文字からきている。同社CEOのジェット・リー氏と、スマホメーカーOPPOの創設者兼CEOであるトニー・チェン氏だ。リー氏はかつてOPPOインドネシアのCEOを務めていた人物だ。J&Tが破竹の勢いで東南アジアでの成功をおさめられた要因は、OPPOの広範な流通ネットワークを活用できたことにあるとも考えられる。OPPOはJ&Tの主要顧客でもある。
J&Tは宅配サービス事業者だが、技術力を強みとするテックカンパニーでもある。顧客が荷物をリアルタイムで追跡できるモバイル アプリなどのテクノロジーを採用し、高い顧客満足度を実現した。倉庫管理システムや主要なオンラインマーケットプレイスのプラットフォームとのAPI連携により、シームレスな注文フローを確保している。
国内Eコマース市場の拡大もJ&T急成長の後押しとなった。J&Tは、Tokopediaをはじめインドネシア国内のEコマース大手数社を顧客に持つ。Eコマース事業者用ワンストップソリューションとして、同事業に特化した三大コアサービス「フルフィルメント」、「ラストマイル配達」、「国際配達」を提供しているのだ。
地方の小規模スタートアップの成長を支援するESG活動もさらに、J&Tは中小企業のビジネス促進にも取り組んでいる。2023年4月には、ベトナムで伝統工芸品を主幹産業とする村との協力を発表。同国での全国規模のネットワークを活かし、地元の物流事業の発展とデジタル化促進を支援するとした。同様にフィリピンでも、パンデミックで困難に直面した地方の中小企業にスポットを当てるキャンペーンを展開し、販売のオンライン移行を促すなど、各国で類似の活動を行っている。
自社の成長はもちろん中小企業も支援することで「国際的物流のリーダー」を目指す同社。
中国においても2019年の進出以降、OPPOや国内第2位のEコマースプラットフォーム拼多多(ピンドゥオドゥオ)との提携、物流大手「百世集団」や順豊控股傘下の「豊網速運」買収などを経て、J&T(中国では「極兔速逓」という名称)3年も経たないうちにシェア10%を獲得した。昨年10月末には香港証券取引所で上場を果たし、国際物流のリーダーを目指すうえでマイルストーンに到達したと述べている。
創業者2人の母国である中国でもこうして拡大を続けてはいるが、過度なダンピングを行わないよう中国当局から警告されるほどの低価格戦略により、同国での物流事業は赤字となっている。今年1月には、同じく低価格を売りとする格安アプリTemu(ティームー)との新たな提携を交渉中と報じられた。この提携で同社が強みとしているラストワンマイル配送に集中し、利益増となるのだろうか。
引用元:J&T Express
J&T Singapore