2023年の市場規模が198億5000万ドルと推計されたミニPC。CAGR 5.47%で2030年までには288億ドルとなることが予測されている。年々需要が拡大するこの分野で、香港や中国など中華圏のスタートアップが開発を進めている。
そこで今回は、中華圏発の企業が手がけたミニPC3点をクラウドファンディングサイトIndiegogoからピックアップ。プロジェクト開催中&終わっている場合も大半は購入可能なので、興味のある人はチェックしてみてほしい。
リモート勤務の浸透に合わせて誕生した「Pantera PicoPC」まずは、香港XDO社開発の「Pantera PicoPC」。もはや“ミニ”ではなく“ピコ”と名乗る通り、本体サイズは6.9×6.9×5.3センチとポケットに入るサイズ。価格はスペックによって約2万7000~4万円でこちらもミニマル。
Windows 11およびLinux対応なのでオフィスや自宅のメインPCとしてはもちろん、ミニマルなサイズを活かしてデジタルサイネージやPOS、CCTVシステムの組み込みコンピュータなど、要件に合わせてさまざまな場面で活躍する。
4GBのLPDDR4 RAMを2枚用いたデュアルチャネルによって約2倍の通信速度を実現。メモリはSSDを取り替えるかMicroSDカードを挿すなどして増設できる。カードを使ってデジタル一眼レフカメラやアクションカメラ、スマホからPanteraにファイルを簡単に転送することも可能だ。カードスロットの他に、全面・背面合わせてUSB 3.0ポート3ヵ所+USB 2.0ポート1ヵ所を備えている。
メディアストリーミングデバイスとしても機能し、テレビや別売りプロジェクタと合わせて使えば大画面でNetflixやAmazon Prime、YouTubeを楽しめる。冷却ファンは「超静音」のため視聴の邪魔をすることもない。ちなみにファンの音が静かすぎて動作を判別できないため、PCの電源ON/OFFは上面全体を覆う液晶画面で確認するとのこと。
香港を拠点とするXDO社はコンピューティングデバイスを愛するエンジニアやプログラマー、インダストリアルデザイナー集団。 超ミニPC 市場には巨大な可能性があると考え、Pantera開発・発売。リモート勤務する人々が自宅でも外出先でも簡単に持ち運べる高性能マシンを目指し、6年の歳月をかけて完成させたとのことだ。
ポータブルゲーム機のAYANEO発「Retro Mini PC AM01」続いて紹介したいのが、ポータブルゲーム機で知られるAYANEO初のデスクトップ型ミニPC「AYANEO Retro Mini PC AM01」。Indiegogoでのプロジェクトは終了済みだが、現在でもモデルによっては同クラファンサイト上で購入可能。日本国内でも取り扱いが始まっている。
初代Macintoshをオマージュしたその名の通りのレトロデザインが最大の魅力だが、もちろん見た目だけではない。AMD Ryzen 7 5700Uを搭載、OSは最新のWindows 11 homeで、幅13.2センチとコンパクトながら高い性能と拡張性を有している。背面にはUSB 3.2ポートやHDMI、Displayportがあり、無線LANや周辺機器との接続に便利なWi-FiやBluetoothも標準対応となっている。
AYANEOは中国・深圳で2020年に設立されたポータブルゲーム機ブランドで、設立者のArthur Zhang氏はゲーム愛好家にしてハンドヘルドデバイス愛好家。既存の製品に満足できず、ゲーマーのためのWindowsハンドヘルド製品を作ろうと決意し、AYANEOのチームを結成した。
同社のモットーは「本物のゲーマーはゲーマーを知っている」。世界中のゲーマーに最高のゲーム体験を提供すると同時に、世界規模のゲーマーコミュニティを作るという使命を掲げている。
Zhang氏が率いるAYANEOが、ゲーム機以外で自社のインダストリーデザインを活かせる分野を模索し、ミニPCに新規参入。リメイクというコンセプトを織り込みながらデザインしたのが、AYANEO Retro Mini PC AM01である。
ちなみに、ミニPC第二弾「AYANEO Retro Mini PC AM 02」のクラファンプロジェクトも展開されており、現在でも購入可能だ。こちらはクラシックゲーム機を思わせるレトロデザインとなっている。
クラファンプロジェクト実施中、香港発の「ORION1」シリーズ最後に、現在プロジェクトを実施している「ORION1」は、香港に拠点を置くHerk Orion社の製品。「他のハードウェアメーカーが向かわないところを目指す」と公言する同社は、最高のサポートと製品革新を維持しつつ、ハードウェアに最上の価値をもたらすとしている。
大型・複雑で高コストのデスクトップPCはセットアップが煩雑すぎるという理由から、「箱から出せばすぐに使える」ミニPCの開発に着手した。
約17×11×5センチとコンパクトながら膨大なワークロードを処理できる同シリーズには最高スペックの「ORION1 MEGA」から「ORION1 LT」まで5モデルあり、ワークロードや予算に合わせて選ぶことができる。日本円で約6万円から購入可能だ。
学生や社会人、プログラマー、動画編集者など、コンピュータを必要とするすべての人のための製品で、ビジネス、ゲーム、教育、プログラミング、写真・動画編集、3Dモデリング、高精細映像視聴などあらゆるニーズにピッタリとか。
8K動画視聴時のエンターテイメント体験のためにデュアル10Wステレオスピーカーを採用。フロントポートをデュアル15W USB4.0 Type-Cポートにしたほか、64GB+2TBの大容量メモリを実現。上位2モデルのORION MEGAとORION PROには高性能AMD Ryzen 9 7940HSが搭載されている。
最先端のコンポーネントを搭載したORION1シリーズは、従来のタワーPCの代替品としての役割を十分果たしてくれるだろう。
以上、いわゆる中華系企業のミニPCを紹介した。同分野では中華系企業が多数活躍しており、BeelinkやChuwi、Minisforum、TRIGKEYなどが有名だ。日本語サポートを希望する人は日本語サイトがある企業の製品を選ぶとよいだろう。
(文・根岸志乃)