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新しいおもてなし“スマートホスピタリティ”。オーストリアchatlynのAIチャットボット、中東への戦略的拡大も

Techable 2024年5月21日 19時0分

新しい「おもてなし」の形として注目を集めているスマートホスピタリティ。宿泊施設などで最新技術を活用し、顧客ひとりひとりに合ったサービスを提供するというものだ。

このスマートホスピタリティ市場は急激な成長が見込まれている。Data Bridge Market Researchの調査では、2023年時点で約290億ドルだった市場規模が、2031年までに約1870億ドルに達すると予想。年平均成長率26%という、すさまじい伸びだ。

この市場の拡大に寄与しそうなのが、2023年に設立されたオーストリア拠点のスタートアップchatlynだ。同社は宿泊施設向けのAIチャットボットを提供している。

かんたんな設定で優秀なチャットボットを実現

chatlynのAIチャットボットは、中東での戦略的拡大の一環として、5月にドバイで開催された博覧会『Arabian Travel Market 2024』で発表したもの。

目を引くのが、チャットボット導入のハードルの低さだ。Q&A集といった文書(PDF)をアップロードするだけで準備完了。顧客からの質問に自動で答えてくれる。

アラビア語を含む多言語に対応している点も見逃せない。実際、デモ版のチャットボットは、英語でも日本語でも質問にしっかりと答えてくれた。

さらに、このチャットボットはWebサイトだけでなく、WhatsAppや、FacebookやInstagramにも実装可能だ。

顧客には世界に名だたるホテルチェーンも

chatlynは2022年にNicolas Vorsteher氏、Matthias Haubner氏、Michael Urbanek氏の3人が共同で設立した会社だ。

CEOを務めるNicolas氏は人事管理ソフトウェア会社のPre Screenの共同設立者であり、2017年に同社をドイツのXing SE(現New Work SE社)に売却した。ちなみにNew Work SEはLinkedInのようなビジネス向けソーシャル ネットワークサービスを手掛けており、ドイツ証券取引所に上場している。

同氏のホスピタリティ業界での経験は確認できていないが、自身が頻繁に出張や旅行をする中で気づいたことがあるという。それは、宿泊施設の立場で考えると「緊急の問い合わせを電話やメールに頼らず(WhatsAppなどを使って自動で)処理できれば、大きなメリットがある」ということだ。

顧客には、MarriottやInterContinental、Mercureなど世界に名だたるホテルチェーンが名を連ねている。今や1000以上の顧客を抱え、これまで100万件以上のメッセージを処理してきたという。同社がいかに信頼を勝ち得ているかが、分かるはずだ。

宿泊客とのコミュニケーションを徹底的に効率化

chatlynが提供するのは、チャットボットだけではない。

たとえば多言語受信箱の「Omnichannel Inbox」も提供している。同機能では、メール・チャットアプリ・SNSのDMなど、あらゆるチャンネルでの顧客とのやり取りを一元管理できる。

さらにメッセージの共同管理も可能。誰かが欠勤していても容易にカバーできるだけでなく、カスタマーサポートに一貫性を持たせることにもつながる。

ちなみに人間のカスタマーサポートは、AIのチャットボットで対応できない場合が主な出番になりそうだ。デモ版のチャットボットも、こちらの質問に答えられない場合は、ホテルに直接問い合わせるよう提案している。

Omnichannel Inboxのほか、宿泊客への連絡を自動化できる「Automation Studio」という機能もある。紹介動画を見ると、宿泊客が空港に到着した際に、ピックアップの車が到着していることを通知するところからスタート。予定のリマインドやツアーの提案もこなし、全ての旅程を終えた後、宿泊客にレビューを依頼するところまで自動で対応している様子がうかがえた。

同サービスの全体像から、「宿泊客とのコミュニケーションを徹底的に効率化したい」というchatlynの一貫した姿勢がみてとれる。

スマートホスピタリティ市場は、成長が見込まれると同時に、競争環境も今後激化することが予想される。画期的なサービスで急成長を遂げたchatlynが、今後どのように生き残っていくのか注目したい。

参考・引用:
chatlyn
Massive Media

(文・里しんご)

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