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【アフリカスタートアップ投資の注目業界:Vol.5】モバイルゲームの出現により増加するゲーマーの獲得競争が進む

Techable 2024年5月23日 12時0分

本稿は、アフリカビジネスパートナーズによる寄稿記事である。同社は、ケニアや南アフリカに現地法人を持ち、アフリカ40か国で新規事業立ち上げやスタートアップ投資に関する支援を提供している。現地のビジネス最前線を知る同社独自の視点から、投資家が注目するべきアフリカのスタートアップトレンドを毎月ピックアップして紹介していく。

前号では、若者人口の増加が続くアフリカで教育関連のサービスを提供するスタートアップを取り上げた。

第5回となる本号では、ブーム直前にあるアフリカのゲーム業界で奮闘するスタートアップを取り上げる。こちらも、若者が需要を支える市場だ。

アフリカではいま、ゲーム人口が増加しており、その背景にはモバイルゲームの出現がある。なんとゲーム人口全体のうち9割がモバイルゲームをプレイしているという。かつてのようにゲーム機を買う必要がないうえ、スマートフォンの普及がモバイルゲーム人気につながっている。

アフリカでは中国企業が販売するTecnoというブランドの低価格スマートフォンが人気だが、こういったスペックが高くないスマートフォンでも問題なく動くゲームアプリが開発されたことも、ゲーム人口が増加している理由のひとつだ。バトルロワイヤルゲームの 『PUBG Mobile』や『Call of Duty: Mobile』、ランアクションゲームの『Subway Surfers』、パズルゲームの『Candy Crush』が人気となっている。

南アフリカのゲームパブリッシャーが先駆け

アフリカのゲームスタートアップでは、パブリッシャーがまず登場した。南アフリカのゲームパブリッシャーCarry1stは2018年の創業以来、アフリカ全土の数百万人にモバイルゲームを配信してきた。米Activision、フィンランドのSupercell、米Riot Gamesといった世界大手ゲーム制作会社を提携先に抱える。

2020年までのシードラウンドで400万ドル、2021~2022年のシリーズAラウンドで2,600万ドル、2023年のプレシリーズBラウンドで2,700万ドルを調達しており、累計5,700万ドルを調達している。

既存投資家にはAndreessen Horowitz(a 16z)、BITKRAFT、Google、Riot Games、Nasといった大物の投資家企業が並ぶ。日本からもソニーがアフリカのエンターテインメントに特化したCVCを立ち上げた直後、第1号案件として投資している。

「稼ぐために遊ぶ」ゲームが登場

昨今はゲームをプレイすることで仮想通貨を稼ぐことができる、いわゆるPlay to Earn(P2E)ゲームを配信するスタートアップも誕生している。教育産業について取り上げた前号でも触れたとおり、大学を卒業した若者でさえ就職先を見つけることが困難なアフリカでは、追加収入を得る手段のひとつとしてP2Eゲームが浮上しているのだ。

たとえばJamboは、P2Eゲームを配信するポータルサイトの運営を行っている。2022年時点で、ナイジェリア、ケニア、モロッコ、南アフリカといったアフリカの主要国を含む15か国でユーザーを獲得している。

同社は、ブロックチェーン技術を基盤としたインターネット概念Web3をアフリカに導入することを目的として、2021年にコンゴ民主共和国出身の兄弟により設立された。P2Eゲームをアプリで配信するだけでなく、ゲームで獲得した仮想通貨を管理するための独自のデジタルウォレットも提供している。

Jamboは2022年にシードラウンドで750万ドルを調達。同年にシリーズAラウンドで3,000万ドルもの調達を行っていることをForbes誌が報じている。これらの資金を用いて、Jamboのゲームアプリを事前にインストールした独自のスマートフォンを1台あたり99ドルで販売するほど、新規顧客開拓に力を入れている。

eスポーツに特化したサービスも誕生

世界で普及するeスポーツは、アフリカでも人気を博している。eスポーツとは、スポーツ競技のようにゲームの対戦を行うもので、その対戦の設置などを含む運営支援サービスを提供するのが、エジプトのGBarenaだ。

GBarenaはeスポーツのトーナメント主催者向けに、トーナメントの作成や参加者の管理を効率化するプラットフォームを提供している。エジプト、サウジアラビア、UAE を含む27か国で事業を展開しており、2023年にはチュニジアのゲーム開発会社向け収益化支援スタートアップGalactechを買収した。

現在は流通支援が主流。長期目線ではアフリカ発のゲーム誕生に期待

アフリカの若者人口は今後も増加を続けるため、それに伴いゲーム人口も増加することが期待できる。ソニーがCarry1stに出資したように、市場拡大を期待した世界のゲーム会社やパブリッシャーによるアフリカのゲームスタートアップの買収もありえそうだ。

アフリカのゲームスタートアップは、現時点ではパブリッシャーやeスポーツ支援といったゲームの流通や普及を助ける事業が主流だが、ゲーム人口がさらに増えればアフリカのゲームユーザーを想定したゲームや、アフリカならではの発想で作られるゲームが必要となるだろう。

ゲーム業界で生成AIやWeb3による開発が進むなか、ゲームそのものの開発がアフリカで行われる日も夢ではない。

文・藤原梓(アフリカビジネスパートナーズ)

参考:
週刊アフリカビジネススヘッドラインニュース596号(2022年5月16日号)
週刊アフリカビジネス681号(2024年2月5日号)
週刊アフリカビジネス691号(2024年4月15日号)

≪アフリカビジネスパートナーズ プロフィール≫

https://abp.co.jp/
アフリカビジネスに特化したコンサルティングファーム。2012年設立。ケニアや南アフリカに現地法人を持ち、アフリカ40か国で新規事業立ち上げや事業拡大、スタートアップ投資に関する支援を提供。スタートアップ関連では、日本企業やCVCに対する有望スタートアップの紹介や、出資の際のデューデリジェンスを中立的な立場から提供している。2022年にはアフリカのスタートアップの調達金額やビジネスモデルを紹介した「スタートアップ白書」を発行。毎週「週刊アフリカビジネス」をメールで配信し、スタートアップの動きを日本語で提供している。

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