近い将来、起こりうると懸念されている「タンパク質危機」。肉や魚の代わりとなる“代替製品”の開発が世界各国で進む中、高品質のタンパク源である微細藻類を培養し、代替肉に加工するビジネスが広がっている。
微細藻類ベースの代替肉は、本物の肉や大豆よりも手軽かつ環境負荷の少ない方法で生産できるとのこと。一方で、こうした代替肉の多くは、味気なさや食感の悪さ、添加物の使用や栄養不足などの課題を抱えている。
フランスのスタートアップであるEdoniaは、本物と遜色ない微細藻類ベースの代替肉を独自の技術で生産している。先日、巨額の資金を手にしたばかりのこのスタートアップの事業内容を見ていこう。
世界で広がる「培養」食用牛が、その体の構造上どうしても温室効果ガスを発生させてしまうことは多くの人に知られている。複数ある胃の中で、牛の食べた飼料が消化されてタンパク源になっていく。その副産物として二酸化炭素やメタンが発生するのだ。それは牛のおならやゲップという形で排出される。
従って、近年では「メタン生成菌を抑制するワクチン」の開発に取り組んでいる企業も存在するが、そもそも家畜は食肉になるまで非常に手間がかかる。手早く食料を生産する方法として、今では「培養」という手段が注目を浴びているのだ。
Edoniaの場合は、上述の通り微細藻類の培養に活路を見出している。
添加物なしで肉とほぼ同様の味や食感を実現Edoniaは、培養した微細藻類を「Edonization」と名付けた技術で食用に耐え得るものにしたという。これは人工香料や添加物を一切使わずに、肉とほぼ同様の味や食感を確立するものとEdoniaは主張する。「余計なものは入っていない」ということだ。
そんなEdoniaは今年4月、Asterion Ventures主導のプレシードラウンドで200万ユーロを調達した。これは、微細藻類ミートに対する非常に強い関心が集まった証明でもある。
スタートアップメディアEU-Startupsには、フランスのグランゼコールであるAgroParisTechとEdoniaの共同で実施されたライフサイクルアセスメントの結果が掲載されている。
同記事によると、Edoniaの製品は従来の肉製品と比較してCO2排出量が40分の1、大豆製品と比較しても3分の1以下に抑えられているという。
温室効果ガスの約34%は食品システムから発生しているため、この分野での「グリーン化」は急務とのことだが、Edoniaの微細藻類ミートは問題解決に向けた大きなヒントを創出するほどのパフォーマンスを発揮している。
冒頭に書いたように世界的な人口増に応じて安定的に供給できる食料の開発は「人類に課せられた宿題」だ。動乱や戦争が勃発したとしても、それに左右されない盤石の供給量を誇る食料の登場。そうした観点から見ても、Edoniaの微細藻類ミートは「期待の新食料」と言えるだろう。
参考・引用元:
Edonia
EU-Startups
(文・澤田 真一)