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効率的なルート指示で空車とCO2を削減。ベルギースタートアップQargoのAI輸送管理システム

Techable 2024年7月4日 10時0分

トラックを使った陸運には「空車」という問題がある。荷物を積載していない状態で走行するトラックを指す言葉だが、これは日本を含めた世界中で問題視されている。

空車はトラック運転手の時間を奪うだけでなく、燃料の無駄な消費につながり、高コストの原因になりかねない。もちろん、CO2排出という点から見ても良いことではない。

空車率を下げるために運送会社にオペレーションルームを設けて効率的に配車する……という方法はさらなる人件費が発生してしまう。しかしベルギーのスタートアップQargoが開発した陸運管理プラットフォームは、発注書を基に最適な輸送ルートを割り出すことができるという。

発注書読み込みから請求書生成まで

物流業界は、さまざまな要因が重なり危機に見舞われている。燃料コストの上昇、CO2排出削減の要求、そしてサイバー攻撃の脅威も待ち構えている。それらの影響で過去1年間、イギリス国内だけで約500の運送会社が倒産したという。

そんな中、Qargoは陸運業務の効率化・収益の向上をサポートするAI自動化プラットフォームを運送会社に提供している。

このプラットフォームは、PDFファイルの発注書をドラッグ&ドロップすることから始まる。ここに書かれている内容、すなわち輸送の日時やその内容、距離、ルート、配送先住所、金額などを認識し、それらを自動的にプラットフォームに反映させる。

その後、あらかじめ設定してある稼働車両の中から空車状態のもの、あるいはすぐに動けるものを検索し、マッチング。それに応じた最も効率の良いルートを提案してくれる仕組みだ。そのルートを実際に走行した場合のCO2排出量も算出してくれる。

さらに、顧客に提出する請求書を自動生成する機能も有している。つまり、このプラットフォームのみで運送にかかわる業務過程を完結できるのだ。

大手企業も導入

Qargoが配信したニュースリリースによると、本国ベルギーのみならずイギリス、オランダ、アイルランドの合計140社超が同社のプラットフォームを導入しているという。Altrea Group、Uniserve Groupといった大手企業もこの中に入っている。

今年3月だけでも、Qargoのプラットフォームは17万5,000回の移動を指示した。1日平均3,000台のトラックが動いたという。クライアントはこのプラットフォームを使い、3,500万ポンド以上の請求処理を完了させた。

なお、Qargoのプラットフォームは従来型の陸運オペレーションプラットフォームと比較した場合、約10倍の処理速度を誇るという。

シリーズAラウンドで1,200ユーロを調達

そんなQargoは、今年6月にシリーズA投資ラウンドで1,200万ユーロの出資を得た。このラウンドを主導したのはBalderton Capitalである。

陸運の効率化は、そのまま「トラックの走行距離の削減」に直結する。これもQargoのニュースリリースに書かれていることだが、この企業のプラットフォームを採用しているイギリスの陸運会社Anglia Freightは年間20万マイル以上の走行距離削減を達成したという。これは言い換えれば、1日1台あたり20分以上のルート短縮である。

CO2削減にも大きな効果を発揮する。空車状態のトラックはすべての国際便旅客機を合わせるよりも多くのCO2を排出しているそうだが、それ故に「空車の削減」は膨大な量のCO2を減らす効果をもたらすのだ。

当然これは、運転手の「働き方改革」にも関連する。日本でもトラックドライバーの人手不足から起因する「物流危機」が叫ばれているが、これを解消するには「オペレーションの自動化」が必要不可欠だろう。ベルギーのスタートアップの躍進は、決して遠い国の出来事ではない。

参考・引用元:Qargo

(文・澤田 真一)

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