パンデミックで世界的に需要が急増したUber EatsやDoorDashなどのフードデリバリー。アメリカのニューヨークでは今年4月に配達員の最低自給が19.56ドルに引き上げられるなど、待遇や労働環境の改善が進められている状況だ。
アメリカでフードデリバリーに従事するギグワーカーには、貧困層や移民も多い。しかし、e-bikeは高価すぎて購入できないという事態もあるようだ。こうした背景のもと、およそ6万5000人の配達員が稼働するニューヨークで、Whizzというスタートアップが配達員向けに電動自動車サブスクリプションサービスを展開している。
Whizzは、今年6月にシリーズAラウンドで1200万ドルの資金を獲得。現在ニューヨーク市内の利用者数は7000人以上という。調達した資金を用いて2025年からオペレーションを全米に拡大、2030年までには20万台以上の稼働を目指す。
高品質のe-bikeを手頃な価格で提供Whizzのミッションは、フードデリバリー配達員向けの輸送手段を民主化し、業界に革命を起こすこととしている。信頼性が高く便利なソリューションに誰もがアクセスできるべきという信念に基づき、さまざまなサービスを手頃な価格で展開している特徴がある。
e-bikeのレンタル料金は月109ドル、1日当たり3.6ドル。ニューヨークで“最も低価格”であると謳っている。なお実質的な分割購入プラン「Rent-to-Own」は、毎月129ドルを12カ月払い続けることで(頭金99ドル)所有権が利用者に移る仕組みだ。
また、同社はe-bikeの新車・中古販売も行っているため、新品の車両を1490ドルまたは整備済み中古車両を490ドルで購入することも可能。整備はWhizzが自ら行っている。
車両の利用資格は18歳以上であること、米国発行の写真付き身分証明書および本人名義のクレジットカードかデビットカードを所持していることのみだ。
基本的な修理・整備は無料、バッテリー由来の火災も防止Whizzのe-bikeを借りた場合、タイヤやチェーンの交換、ブレーキ、ライトの調整といった、いずれは必ず起こる故障・不具合の修理は無料で提供される。故障の際のマシン修理またはマシン交換は30分内に完了するという。
盗難防止の防犯錠や車両追跡用のGPS装置も用意。ただし、自前の修理や改造は禁止されている。
高品質のe-bikeを提供することで近年問題となっている低品質バッテリー由来の火災事故防止にも貢献する。ニューヨークでは近年、e-bikeのバッテリーが原因で火災が多発しているのだ。2023年には216件が発生、6人の死者が出ている。
ロシア出身の4人が2022年に設立Whizzは2022年にMike Peregudov氏、Alex Mironov氏、Ksenia Proka氏、 Artem Serbovka氏よって設立された。共同設立者の4人は全員ロシア出身。
ギグワーカー、特に移民にはe-bikeを購入するだけの金銭的余裕がないという課題に気づけたのも彼らのバックグラウンドが理由のひとつにあるかもしれない。同社の通話サポートサービスはスペイン語、フランス語、ロシア語に対応している。
また、6月下旬にはフードデリバリー大手Grubhubのe-bikeパートナーとなったことを発表。Grubhubの配達員はWhizzのサービスを特別価格で利用可能だ。
【参考】
Whizz
DC Velocity
(文・澤田 真一)