パンデミックを機に浸透したリモートワークだが、2023年5月の「5類分類」以降、オフィス回帰の流れが明確となっている。しかし、「Web会議をする場所がない」、「会話の内容が周りに聞こえてしまう」、「他の人の声がうるさくて作業に集中できない」といった問題が発生。
オープンオフィス用個室ワークブース、セミクローズ型が人気それらの解決策として、個室ワークブースのオフィス導入が広がっている。最近では特に、フルクローズ型に比べて低コスト、消防申請不要で設置が簡単なセミクローズド型が人気だ。
2020年7月の発売以来好調が続くコクヨの「WORKPOD(ワークポッド)」シリーズには、2023年6月に天井・床面のない「WORKPOD TETRA」が登場。
昨年末に発表・発売された「日立テレワークブース」の新型も天井に開口部がある。特殊な吸音材および特許出願中の遮音構造技術で高い防音効果を実現、「空気は通すが音は通さない」としている。
また、7月23日にはサンワサプライがセミクローズ型ワークブースを発表したばかり。
世界市場はパンデミック前2015年に誕生かオープンオフィス向けの個室ワークブース市場は、パンデミック前から存在していた。この分野のパイオニアを自認するフィンランドのFrameryは2010年の設立。同社CEOのSamu Hällfors氏は、「2013年の時点では、こうした製品の世界市場は1000台ほどだった。私たちがこの市場を作り出して以来、世界中で200以上のメーカーが誕生した」と語っている。
2020年1月の取材記事では世界市場約40%のシェアを持つと答えていたFrameryだが、Global Info Researchが先月発表したばかりの調査結果によると、Frameryを含む業界トップ5社が屋内防音室の世界市場の60%以上を占めている。2023年に4億4800万米ドルと評価された世界市場はCAGR8.7%で成長し、2030年までに7億9800万米ドルに到達する見込みだという。
日本市場については、2021年1月に日能研が「ワークブースサービス市場2025年に24億円規模」と予測していたが、ブースの設置場所例にオープンオフィスは含まれていない。あくまで「社外、自宅以外での仕事環境」としての予測のため、実際の規模はこの数字を上回る可能性もある。
欧米では仮眠ポッド市場が拡大中、オフィスは有力セグメントちなみに、欧米のオフィスでは「スリーピングポッド」(昼寝ポッド)の導入も進んでいる。同製品の世界市場規模は、IMARCの調査によると2023年に21 億米ドルというから、個室ブースの約4倍だ。今後もCAGR8.61%で成長を続け、2032年には 44億米ドルになると予測されている。
業界大手のMetroNapsが「世界初」のオフィス用仮眠用チェアとして2003年に発表した「EnergyPod」は、GoogleやCiscoなどの大企業で導入されている製品。
昼寝ポッド市場において、空港に次いで大きなセグメントが企業オフィスだ。「パワーナップ」によって生産性の向上やミス防止が見込めるため、MicrosoftやUberなども福利厚生として昼寝ポッドを導入している。日本では三菱地所が2018年に仮眠制度を採用、仮眠室を設置して話題となった。
2023年8月には、立ったまま寝る仮眠ボックス「giraffenap(ジラフナップ)」が登場。北海道旭川市を拠点とする広葉樹合板が開発した同製品は、今年1月から販売が開始されたところ。個室ワークブースの流れを考えると、日本でも今後オフィスで昼寝用設備の導入が進みそうだ。
参照:ネクストレベル プレスリリース
(文・根岸志乃)