日本では夏場の水分補給の落とし穴として、「ペットボトル症候群」が話題となっている。清涼飲料水を摂取し続けることにより、高血糖状態になってしまうというのだ。
ならば、シュガーレスの清涼飲料水を飲めばいい……というわけにもなかなかいかない。シュガーレスでは甘味が遠く、満足感が得られないというシーンもある。
そこで、甘さを損ねずに糖分だけをカットするという技術の確立を目指す企業が現れた。イスラエルのスタートアップBlueTreeである。
砂糖の代替品や化学物質は使用せずに糖分を除去2020年設立のBlueTreeは「高糖度を心配することなく、親が子どもにより健康的な天然飲料を提供できるよう支援する」を使命としたスタートアップ。飲料業界での使用を目的とした糖分削減システムの開発に注力している。
同社のシステムは味を損なうことなく、天然の果汁や牛乳から糖分を選択的に除去するというもの。砂糖の代替品や化学物質は使用せず、すべて天然だ。飲料メーカーのニーズに応じて特定の糖層と量を除去することも可能だ。
今年5月、BlueTreeは同社のシステムがアメリカ食品医薬品局(FDA)の食品安全基準を満たしたと発表。米国での販売を開始する予定だ。
イスラエルのイノベーションメディアnocamelsによると、7月にはイスラエルのOurCrowdやフランスのSucdenなどから合計220万ドルの出資を得ている。
二糖類を濾過技術で取り除く次に、BlueTreeの持つ糖分削減技術の詳細を見ていこう。
AgFunderNewsの記事によると、BlueTreeは限外濾過と吸着を組み合わせた技術を有しているという。取り除くのはショ糖や乳糖といった二糖類だ。実は二糖類は単糖類よりも甘さは控えめで、たとえば飲み物の中の単糖類を30%削減したとしても甘さが3割減るというわけではないという。
もっとも、あまり糖分を減らし過ぎると口当たりに変化が生じてしまい、そこは飲料メーカーが良い頃合いを考えるべきとしている。
欧米の「食品表示」の違いBlueTreeの技術はあくまでも「飲み物から糖分を取り除く」ことであり、新しい添加物は一切投入しない点が魅力だ。
一方で、100%天然ジュースからこの技術を使って糖分を減らした場合、このジュースの食品表示はどうなるのか、という問題がある。このあたりついては、アメリカとEUでは事情が異なる。アメリカでは100%天然ジュースから糖分を取り除いた場合でも「100%ジュース」というラベルを貼ることができるが、EUではそれができないのだ(参考)。
しかし、今後施行される法律「breakfast directives」により、BlueTreeの技術を使った糖分削減飲料は「低糖ジュース」として販売することが可能になるという。
世界各国にライセンス供与を予定AgFunderNewsによるとBlueTreeは今後この技術を世界中にライセンス供与する予定だという。同社CEOのMichael Gordon氏は、
「現在、ラテンアメリカ、東南アジア、ヨーロッパの大手メーカーと交渉中です。(中略)我々は、粗利益の5%以下を請求することを目指しています」
と、語っている。
食品表示に関する法律は各国で異なり、そのあたりをどう乗り越えるかという点で疑問が残るものの、低コストで飲料の糖分削減を実現できる技術は我々の生活にも良い影響をもたらす可能性がある。
参考・引用元:
PR Newswire
BlueTree
(文・澤田 真一)