近年はソーシャルメディアの急速な普及により、消費者がカジュアルなコンテンツへ気軽にアクセスできるようになった。その一方で芸術や文化、歴史コンテンツはその可能性を十分に発揮できずにいる。芸術や歴史の奥深さと豊かさを伝えるには高度なテクノロジーと洗練されたインタラクションが必要となるため、アクセスが制限されがちなためだ。
最近はバーチャル空間で所蔵作品を展示するメタバース美術館・博物館、現実の神社を再現したメタバース神社なども多く登場しているが、リアルな没入感を実現するのは至難の業だという。
そんななか、ベトナムのスタートアップPhygital Labsは、メタバースプラットフォーム「Galerio」を設立し、ベトナム最後の王朝をテーマにした空間文化体験を発表した。現在、galerio.ioで世界中からアクセス可能(Vision ProとQuestに対応)だ。
ストーリー主導の没入体験を作り出すメタバースGalerioは空間コンピューティングを使用して、ストーリー主導の没入体験を作り出すメタバースプラットフォーム。AppleのVision ProやMetaのQuestなどのデバイスを活用して、芸術・文化・歴史分野のアーティファクトをリアルに再現する。
MetaのHorizon WorldsやDecentralandなどのソーシャル型のメタバースは、「共有のメタバース空間で他者とリアルタイムでつながること」に重点を置いているが、Galerioは高忠実度のメタバース環境内での発見・探索を核としている。Galerioでは直感的でハンズフリーなインタラクションを提供し、時を超えて受け継がれてきた歴史的・文化的な物語へとユーザーを導く。
Beta Test Galerio: Discover a Royal Dynasty Story in a Rich Spatial Experience!
Visit us at https://t.co/wvwACqGbri—we’d love to hear your feedback! pic.twitter.com/PDBso1gK4P
— Galerio (@galerio_io) August 19, 2024
Galerioでは、リアルな 3Dビジュアル、没入型のサウンドスケープ、AI ガイド付きツアーを提供している。
“デジタル復元”では、遺物や工芸品の現在の状態だけでなく作られた当時の姿まで再現される。また、時の流れの中で遂げた変容までも描き出し、変化の過程に隠された意味を明らかにするという。
アプリではなくWebフレームワーク上に構築メタバースプラットフォームは、各種XRプラットフォームへの展開可能性が求められるが、すべてのデバイスでネイティブ・レベルの品質を確保するためには、綿密なエンジニアリングが必要だ。
そこでGalerioは、ネイティブアプリではなくWebフレームワーク上に構築するというユニバーサルなアプローチを採用。この戦略により、クロスプラットフォームでの迅速な展開が可能になった。
実際、GalerioはVision Proでのローンチからわずか2週間後にQuestでもローンチ。その後間もなくモバイル版にも対応し、XRヘッドセットを持たないユーザーへのリーチを大幅に拡大した。
ブロックチェーン上で9つの王室の骨董品を紹介今回、Galerioではベトナム最後の王朝・阮朝に特化したパイロットチャプターを公開した。Phygital Labsの主力製品である「Nomion」の技術を使用して、ブロックチェーン上でデジタル認証された王室の骨董品を紹介している。
パイロットチャプターで紹介される王室の遺物9点は、それぞれ9人の皇帝にまつわる品。1点ごとにストーリーが展開され、皇帝たちの生涯を垣間見ることができるという。訪問者は骨董品に触れることで、そこに込められた意味をより深く探究できる。まさに、“ストーリー主導の没入体験”だ。
Do we really understand the true essence of 'Real Spatial Experience’ ?
Spatial Experience is not merely about being physically present in a space, but about how deeply you connect with it through a blend of physical and digital elements. It's about feeling immersed in a… pic.twitter.com/J08rfrH5E0
— Galerio (@galerio_io) July 24, 2024
阮朝のパイロットチャプターに続き、残りのチャプターは第4四半期の初めにリリースされる予定だ。同時にさらなる博物館や文化機関、個人コレクターを招致することで、彼らが所蔵する工芸品、芸術品、彫刻、収集品を展示することでGalerioのラインナップを強化する。
この取り組みにより、Galerioは世界的な文化ハブに変貌し、世界中の多様な文化的宝物でプラットフォームを豊かにするという。最終的には、伝統的な境界を越えた異文化交流促進を目指す。
デジタルID作成ソリューション「Nomion」Phygital Labsは、シリコンバレー出身の若者チームによって2023年に設立されたベトナムのテック企業。Phygital(フィジタル:「Physical」と「Digital」を組み合わせた言葉)の世界を作り、世界市場におけるベトナムブランドの価値を高めることを目指している。
同社の製品は、固有のデジタルIDを作成するソリューション「Nomion」や、ランナーがマラソン、トレーニング、イベント・企画に参加できるメタバースアプリ「Ramamuri」など。
NomionはGalerioにも活用されている製品で、無線周波数識別(RFID)とブロックチェーン技術を活用することで、フィジカル・デジタルの両方の領域で製品の真正性、透明性、独自性を保証するというもの。LiDAR技術やVR/AR技術を組み込むことで、現実の製品をデジタル環境にシームレスに統合し、その価値を高める。
そんなNomionはデジタル経済に好影響を与えるだけでなく、ベトナムの文化遺産を保存し、広める可能性を秘めていると期待されている。
参考・引用元:
Galerio
Phygital Labs
PR Newswire
(文・Haruka Isobe)