9月5日、Salesforceがデータ管理・保護の大手Own Company (以下Own)を約19億ドルで買収したことが発表された。データセキュリティに対するニーズの高まりに対応したもので、Salesforceとしては2021年にSlackを3兆円で買収して以来の大規模な案件だ。
さらに、4日後の9日にはAI活用インフラソフトウェアを提供するProgressがファイル管理プラットフォームのShareFileを買収予定であることが発表された。
2件の買収はいずれも、エンタープライズ・ソフトウェアの要となるデータの処理・管理能力を強化するための戦略的な動きと見られる。世界的に有名なソフトウェア企業による、データ管理・保護サービスの買収案件が短期間に続けて発表されたことで、効率的でセキュアなデータ管理ソリューションへの需要増が浮き彫りになった。
OwnはSalesforceエコシステムの一部Ownは2015年の起業(当時の名称はOwnBackup)以来、バックアップとリカバリという当初のビジネスを超えて急成長。2021年にはNimmetryとRevCultを買収、昨年には「 Deloitte Technology Fast 500」に選ばれるなど勢いのある企業だ。
OwnとSalesforceとのつながりはOwnBackup設立より前のこと。Ownは2012年からSalesforceのAppExchangeパートナーに含まれている。また、Salesforce Venturesのポートフォリオ企業として投資も受け続けてきた。
SalesforceのゼネラルマネージャーであるSteve Fisher氏は今の時代におけるデータセキュリティの重要性を強調。今回の同意は、顧客の重要なデータを守りつつ変化を続けるデータセキュリティとコンプライアンスの状況に対応する努力を明確に示すものであるとした。
OwnのCEOであるSam Gutmann氏も、急速に進むデジタルトランスフォーメーションやこの業界が「世界で最も複雑で規制が厳しい」ことに言及。自社のミッションが当初のデータ損失防止と復旧からデータ保護へ、ひいては顧客のビジネスインサイト解放やAI駆動イノベーションの加速にまで広がったと語っている。
ShareFileは強固なファイル共有・同期ツール一方、ProgressによるShareFile買収提案は、前者が継続する総合成長戦略の一環でもある。
Cloud Software Groupの事業部門であるShareFileは2005年の設立。顧客とのファイル共有を行えるセキュリティの高いウェブツールへのニーズはあったのに、セキュアなクラウドコラボレーションは存在していなかった。この需要を満たすためにJesse Lipson氏が立ち上げのがShareFileだ。
ファイルの共有や同期だけでなくクライアントポータルや電子署名などの機能を備えた同社のクラウドコラボレーションによって、設立以来9万社以上の顧客を支援してきたという。
買収予定について、ProgressのCEOであるYogesh Gupta氏はセキュリティ強化とコンプライアンス対応の必要性に言及しながら、「ShareFileの既存ユーザーは、Progressの持つ広範な製品ポートフォリオと専門知識から恩恵を受けられる」とした。
Cloud Software GroupのCEOであるThomas Krause氏もこれに同調、Progressとの協働によりShareFileの既存顧客が複数の恩恵を受けられるのは間違いないとした。
セキュアなデータ管理ソリューションのニーズ高まるもともとM&Aが活発なテクノロジーセクターでは、今後も同様の買収が行われる可能性が高い。
投資銀行PMCFのまとめによると、ソフトウェアおよびテクノロジー部門の2024年第1四半期の取引量、総額ともに前四半期から大幅に増加したことが分かっている。
テクノロジー部門全体の取引総額は昨年第4四半期と比較して45%増加し、取引額は1,210億ドルとなった。この伸びを支えたソフトウェアの総取引額は前四半期比180%増加、取引量は15%増加の578件とのことだ。第一四半期に見られたM&A活動の増加は、この分野でさらに魅力的な取引が検討中であることを示唆しているという。
また、Statistのレポートでは、データセキュリティ市場の2024年収益は70億6,000万ドルに達する見込み。今後11.28%のCAGRで拡大を続けて2029年には市場規模120.5億ドルになるとしている。
参照:
Salesforceリリース
Own Companyリリース
Progressリリース
ShareFileリリース
(文・Techable編集部)