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日本でも導入のオンデマンド交通プラットフォームSpare、シリーズBで約44億円調達|身体が不自由な人向けにも展開へ

Techable 2024年9月14日 12時0分

テクノロジーの進歩に後押しされ、「オンデマンド交通」が社会に浸透しつつある。これは事前予約に応じて運行する“乗り合いの公共交通機関”。予約はスマホから簡単にでき、運行ルートが柔軟で、既存の公共交通機関のルートではアクセスしづらいところにも行きやすくなるなどのメリットがある。近年日本国内でも実証が進み、人口が少なく、交通弱者となりやすい高齢者が多い地方などで特に導入が進んでいる。

そうしたサービスを支える人工知能(AI)活用型のプラットフォームを開発し、日本でも利用されているカナダのSpareがこのほど4,200万カナダドル(約44億円)を調達した。プラットフォームの提供をさらに促進するとともに、今後は身体が不自由な人向けのオンデマンド交通にも力を入れていくという。

オンデマンド乗合交通ならではの柔軟な運行計画を支援

カナダ西部バンクーバーに本社を置くSpareは2015年創業のスタートアップ。利用者のニーズに応じて乗車を提供するオンデマンド乗合交通のライドシェアリングアプリを手がけ、事業者に提供している。

同社のAIプラットフォームは運行状況をリアルタイムに把握し、柔軟な運行計画を立てることが可能。事業者がサービスを立ち上げてユーザーに乗車を提供し、事業として機能させるためのコアな部分をサポートする。

同社によると、従来とは異なるテクノロジーを活用したオンデマンド交通に対する需要は世界的に増えているという。そうした需要に対応しようと、同社はこのほどシリーズBラウンドで追加資金を確保した。

同社のプラットフォームはすでに北米をはじめ、欧州やアフリカでも利用されている。また、日本では三菱商事との合弁会社「スペア・テクノロジーソリューションズ」が2019年に設立された。日本での最初の導入例は、三菱商事と西日本鉄道の合弁会社「ネクスト・モビリティ」が福岡市で展開しているオンデマンドバスだ。

スペア・テクノロジーソリューションズのウェブサイトを見ると、その後同社のプラットフォームの利用例は順調に増えており、今年に入ってからは徳島、三重、山梨、静岡、福岡、宮崎で導入されているとある。

過疎化などでバスの路線が廃止されたり、特殊な免許を必要とするバス運転手が足りなかったりするなど、公共交通の維持については日本各地で問題に直面しているが、そうしたなかでオンデマンド乗合交通は“地域の足”の維持に貢献しているようだ。

高齢化社会で予想される需要増

Spareは世界各地でのプラットフォーム提供に加え、今回調達した資金で身体が不自由な人向けのオンデマンド交通にも今後注力していくとしている。高齢化が進むにつれ、効率的でフレキシブル、そしてニーズにすぐさま対応できる交通ソリューションが一層求められるようになるとの考えが背景にある。

確かに、加齢や病気などで身体に不自由を抱え、公共交通機関の利用や車の運転が難しい場合、遠くまで外出するのは困難だ。家族や友人による送迎や、タクシーなどに頼らざるを得なくなり、外出を諦めることもでてくるだろう。

Spareの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のKristoffer Vik Hansen氏はシリーズB完了の発表文で、交通を一層アクセスしやすいものにすることを社の使命に挙げている。実際、体が不自由な人や高齢者も含め、皆にとって使いやすく、安価なオンデマンド乗合交通がある社会は理想だろう。

今回のシリーズBはテック企業などを専門とするカナダのベンチャー・キャピタルのInovia Capitalが主導した。2019年のシードラウンド(600万ドル)は三菱商事がリードしている。

参考元:Spare

(文・Mizoguchi)

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