企業のDXが推進されるなかで、導入されたシステムを誰もがスムーズに扱えるようにするための「デジタルアダプション」という考え方が広がっている。
従業員のITリテラシーに差があることなどによって、せっかく導入したシステムも「特定の人しか使えない」といった事態を招いたり、IT担当者がオンボーディングやサポートで手一杯になってしまったりなど、効果的な導入となっていないケースも少なくない。
そこで近年注目されはじめているのが、デジタルアダプションプラットフォーム(Digital Adoption Platform:以下、DAP)だ。DAPは、利用者がアプリケーションを最大限かつ効率的に活用できるように、利用状況に応じたアプリ内ガイダンスやチュートリアル、利用するにあたってのトレーニング、セルフヘルプサポートなどを利用者に提供する。
ITRのレポートでは、2027年度までのDAP市場のCAGRは42.1%、2025年度には市場は100億円規模に迫ると予測。操作のガイダンスや入力支援などを提供するだけでなく、バックエンドで操作の問題点を可視化するツールとしても注目されているとしている。
企業はトレーニングやヘルプデスクにかかるコストを低減できると同時に、DXの社内定着を高速化させ、IT担当者は本来の業務に回帰できるといったメリットも享受できる。
このDAP市場を牽引する、カリフォルニア州サンノゼを拠点とするWhatfixが9月25日、シリーズEラウンドで1億2,500万ドルを調達したことを発表した。同ラウンドはWarburg Pincusが主導し、既存投資家であるSoftBank Vision Fund 2も参加している。
急成長するDAP市場をリードするWhatfix
Gartnerの2023年市場ガイドによると、2025年までに70%の組織がDAPを使用すると予測されており、DAPが企業のDXを推進するうえで重要な役割を果たしていることが示されている。
この変革をリードするWhatfixは、2021年の資金調達ラウンド以降、年間経常収益(ARR)が4.5倍に増加。3年連続でDeloitte Tech Fast 500のトップDAPに選出されているほか、Microsoft、Salesforce、Infosys、Accentureなどといった著名企業へサービスを提供する実績を持つ。
アプリケーションのユーザー化で先駆けるWhatfixWhatfixは、企業が投資対効果を最大限に高めることができるように、アプリケーションの「ユーザー化(Userization)」というコンセプトを先駆的に提唱している。同社は、いままでのDX推進においては利用者がアプリケーションに適応する責任を負わされてきたと指摘し、本来は「アプリケーションが利用者に適応する責任を負うべきだ」と言及。DAPをはじめとする自社の製品群全体に生成AIを統合することで、この利用者ファーストのアプローチを加速し、優れたアプリケーション体験を提供することができるとしている。
同社CEO兼共同創業者であるKhadim Batti氏は、このように述べる。
企業はDXの複雑さに直面するなかで、優れたアプリケーションの利用体験を提供するためにはどうすべきなのか、そのプレッシャーはますます高まっています。Whatfixの革新性は2021年以降、4つの新製品をリリースし、5件の米国特許を取得し、さらに18件が申請中であることからも明らかです。今回の資金調達によって業界に新たなイノベーションを加速させ、顧客に提供する価値を強化します。これは『ユーザー化』の未来を構築するための追い風となるでしょう。
Whatfixは2021年以来、4,100人以上のDAP専門家を育成しており、今後も多くの専門家を育成することにコミットしている。
参考元:
Whatfix
プレスリリース
(文・五条むい)