コンビニでホットドッグを買った際に、「片手で割ってトマトソースとマスタードを出す容器」をもらったことはないだろうか。そんな小分け容器の正式名は、2つに割るイメージそのままに「パキッテ」だという。今回は製造元・株式会社ディスペンパックジャパンの池上大志氏、増子諒一氏を直撃し、容器としての魅力を存分に語ってもらった。
今でこそ調味料のイメージが強いパキッテだが、ルーツは食品業界ではない。
「当初は高所作業中に片手で開封できる消毒液の容器としてアメリカで開発され、その後弊社で食品用としての生産を始めました」(増子氏)
そして1986年の生産開始以降、パキッテはコンビニや給食を中心に販路を拡大。トマトソースとマスタードの組み合わせの他にもさまざまな組み合わせがあり、現在は2つの液体が出るタイミングをずらせる容器も用意していると池上氏は説明する。
「過去には『納豆のたれ&からし』を発売しまして。両方ともかけたい方には全部しぼってもらい、からしが苦手な方にはパキッと割っていただいたままにすれば、たれだけが出てくるという設計で提供していました」
現在は南足柄工場で45種、富士吉田で約80種の商品が生産されているが、その中には変わり種も存在していた。
「一時は介護現場のために『簡単ゼリーの素』を作ったこともありました。飲み込む力の弱いご年配の方に向けて、お味噌汁に混ぜてとろみを付ける商品を開発したんです」(池上氏)
「切り花の栄養剤や、超音波検査で使うゲル、ペット用のシャンプーもパキッテに充填したことがありますね。他にも特殊な例としては、マラソンランナーがすぐ補給できる栄養剤を詰めてほしいという依頼がありました」(増子氏)
もちろん食品用のパキッテも進化中。特に外食産業のニーズに合わせて内容物や容器の形状も変化しているという。増子氏は「最近はドリンクシロップの容器として使われるようになっています」と笑顔に。
「パキッテでコップにシロップに入れた後に、炭酸水を注いでドリンクにするという形式は増えました。ドリンクバーに入る数の上限を気にせずに、新たなドリンクを販売できるという点もパキッテの強みです」と新たな需要を語った。
また池上氏は「カルボナーラのパスタソース」のパキッテがあることを紹介。個包装で分量にばらつきがないため、常に同じ味で提供できることが重宝されているという。さらに驚くべきはベーコンやコショウも同梱していることだ。池上氏は「割った時により広い出し口ができる構造になっていますので、少し大きな具材にも対応できます。過去にはナッツ入りのチョコクリームも生産したことがありますよ」と自信をのぞかせた。
そんな奥の深いパキッテだが、以前は商品名を当てるクイズで常連の、「名前が分からないアレ」であったことも事実。2019年までの旧名「ディスペンパック」が“難問”として扱われていたことを会社ではどう思っていたのか。
意外なことに増子氏は「私個人としては雑学として扱ってもらえるのはうれしかったですね。名前を知らなくても皆さんがご存じであるということに、ポジティブな気持ちでした」と前向きに受け止めていたことを告白。一方池上氏は「皆さんに使っていただけているならいいのかなとも思いましたが…」としつつ、「発売から長年知名度が上がっていなかったことも事実で。直感的に分かっていただける名前を付けようということで『パキッテ』と改名しました」と率直な心境と改名の経緯を明かした。
ちなみに現在はパキッテに施されている直線状の突起「リブ」の名称を答える問題や、リブが付いている理由を答える問題(正解は「指の力を出し口の部分に集め、真ん中で割れるようにするため」)が番組で出されることも多いという。そもそもこれだけ題材になるということ自体が、誰もが一度はパキッテを割ったことがあるということの裏返しなのだろう。
今後さらなる進化を目指しているというパキッテ。増子氏は「2つの液体を保管できる容器としての特徴を生かして、いろんな素材を生かした商品を作っていきたいですね」と意気込んだ。そして池上氏は外国人観光客からの反応の良さに注目しているとのこと。「海外でも当たり前に使ってもらえる日が来るように全社で取り組んでいます。いつかは“世界のパキッテ”となればうれしいですね」と夢を語った。
一時は雑学のネタになっていたパキッテだが、その中には多くの工夫と未来への展望が詰まっていた。
【パキッテ(ぱきって)】株式会社ディスペンパックジャパンが製造する、片手で簡単に中身を出せることが特徴の小分け容器。旧名「ディスペンパック」は多くのクイズ番組や雑学系コンテンツで取り上げられた。現在もコンビニエンスストアや飲食店、学校の給食などさまざまな現場で使用されており、年間4億9000万個のペースで生産・消費されている。