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手役アーティスト森山茂和「今の新人は100半荘さえ打たないらしい。強くなれるはずない」【後編】

東スポWEB 2024年6月30日 10時14分

【レジェンド雀士からの金言】麻雀プロ創成期から時代をけん引してきたレジェンドが大いに語る当連載。“手役アーティスト”の異名を持つ日本プロ麻雀連盟現会長・森山茂和(72)の後編では、麻雀界の発展に尽力してきた名プロデューサーが、同団体の“カミナリ親父”として後輩たちに喝を入れる。

プロレス好きの森山は東スポ愛読者でもあった。

「長州力さんは同郷で同い年。大学も同じだったんで試合を見に行ったこともありました。やられてもやられても立ち上がり、ここぞで繰り出す必殺技には、胸が熱くなりましたね」

麻雀にはプロレスと共通点があると力を込める。

「“本当の麻雀”も人間と人間が卓上でぶつかり合う格闘技です。逃げ回ることなく、フリ込み覚悟で全力でぶつかっていく。若手プロたちにも熱い戦いを見せてほしいですね」

Mリーグ人気で麻雀プロ志望者は年々増加傾向にあり、2024年現在の麻雀プロ人口は3000人を超えた。日本プロ麻雀連盟1期生でもある森山から見ると、プロテスト受験者のタイプに変化を感じているそうだ。

「普段はサラリーマンをやりながら、資格のひとつとして麻雀プロという肩書が欲しいという人が増えている印象はあります。中には麻雀を始めて半年で受験しに来る人もいます。でも私たちのような麻雀プロ創成期の人間は、腕だけを頼りに何の保証もない世界に体ひとつで飛び込んできた。プロとして食べていける人が少ない中で、もがき、あがく日々。そんな時代だったんですよね」

同団体のリーグ戦は創設以来、一発・裏ドラ・赤牌を採用しないルールで戦っている。

「運だけのアガリや浅い打ち方をできる限り排除するために、そうした厳しいルールの中で何とか役を作ろう、高打点を目指そうと自分なりに開拓していくことでおのずと雀力がついてくるからです」

現鳳凰位(日本プロ麻雀連盟の最高峰タイトル)である佐々木寿人プロも同ルールで腕を磨いたひとりだという。

「寿人はプロ入り当初によくやっていた愚形リーチをあまり打たなくなり、当時と比べると格段に腕を上げました。もともと粗い麻雀だったんですが、今は緻密で堅く打ちます。その上で寿人の良さでもある運やツキをうまく使える打ち方を持っている。だから解説などでは寿人はツイてましたねで終わらせるのではなく、そういう本質的な部分も伝えていかなければと思っています」

団体創設当時から雀力あってこそ麻雀プロというスタンスは変わっていない。

「今の新人は月100半荘さえ打たないらしいのです。実戦以上の上達方法はないのだから強くなれるはずもない。とにかく打つ回数を増やしてほしいですね」

時代の変化を最前線で感じてきたからこそ、常に危機感を抱いている。

「いつも若手プロには目の前だけ見るなよとは伝えています。単に局を進行させるだけの麻雀でたまたま勝ちにつながることがあっても、誰も感銘を受けないぞと厳しく伝える時もあります。そして何でもかんでもオリればいいわけではない。最低限の読みの技術とツキを頼りに、戦った先にある放銃は悪い放銃ではないんでね」

厳しいことを伝えることで嫌われたとしても、それは自分の役割だと自覚している。

「ただ、今の世の中はネットの一部の意見が強すぎる。私ひとりが炎上するのは構わないけれど、団体に迷惑をかけたくない気持ちはあります。でも麻雀プロという存在が生き残っていくためには必要だと思っています」

プロテストに受かったからといって生活が保証されるわけではない。ひたすら鍛錬を積み重ね、結果を出し、仕事のオファーを待つという厳しい世界。だからこそ後輩プロたちにチャンスの場を広げ「麻雀プロが食える世界」を切り拓いてきた。

「小島武夫と灘麻太郎という超一流プレーヤーたちから肌で感じた素晴らしいものを残し、それをどう若手プロたちに伝えていくのか。誰からもリスクペクトされる麻雀プロに育ってほしいという思いがあるんでね。だから若手で強いプレーヤーが出てくるとうれしいけど、まだトータルでは負けるとは全然思っていない。もちろん自分でダメだなと思ったら、その時は引退しますけどね」

☆もりやま・しげかず 1951年11月6日、山口県生まれ。専修大学卒業。主な獲得タイトルは第9期王位、第12期最強位、第6回MONDO21杯、MONDO麻雀プロリーグ第17回名人戦、第3・6・7・12・13・16回天空麻雀など。著書に「麻雀プロはこう読む」。北海道から九州まで全国12か所に支部を構え、約900人が所属する日本プロ麻雀連盟の現会長。2003年、オンライン対戦ゲーム「KONAMI麻雀格闘倶楽部」に麻雀プロを登場させるなど、「麻雀プロが食える世界」を多角的に構築してきた。

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