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【佐藤優コラム】大統領選、頑張れトランプ その方がアメリカの「病理」がよく分かる

東スポWEB 2024年7月4日 16時25分

6月27日に米国ジョージア州アトランタで大統領選挙に向けた民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領によるテレビ討論会が行われた。

誰が見てもトランプ氏の方が優勢だった。トランプ氏が大統領に返り咲くという現実を受け入れられないアメリカのマスメディア、特にニューヨーク・タイムズの報道姿勢は、公平性が守られていないというレベルをはるかに超えた醜悪極まりないものだ。

<米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は28日、バイデン大統領が11月の大統領選から撤退すべきだとする社説を公表した。前日の討論会で衰えが明らかになったと指摘したうえで、トランプ前大統領の再選というリスクを止めるには、より強い候補者が必要だとし、バイデン氏に「国のために大統領選から身を引くべきだ」と迫った>(6月29日「朝日新聞デジタル」)

トランプ氏を大統領にしてはならないから、バイデン氏に選挙戦から引けなどと言う資格が一民間企業NYTにあるのだろうか。トランプ氏支持者たちが現下のアメリカは、選挙で選ばれた大統領や連邦議会議員、試験による選抜を経て採用された官僚ではない目に見えないエリート層(いわゆるディープステイト[闇の政府])に支配されていると主張するのも、NYTをはじめとするアメリカのメディア・エリートたちの言動を見ると、それほど外れていないように思える。

筆者はトランプ氏に頑張ってほしいと思う。そうした方がアメリカが抱えている病理がよく見えるからだ。国際社会において、アメリカの力が衰退する傾向は変わらない。

にもかかわらず、世界各地の問題にアングロ・サクソン流民主主義という価値観を掲げて、ただでさえ複雑な事態を一層複雑にしている民主党政権よりも、「アメリカ・ファースト」を掲げ、事実上の撤退戦を訴えているトランプ氏の方が、世界の安定に貢献すると筆者は考える。

ちなみに日米同盟は日本にとって死活的に重要だ。その理由は、価値観が一致するからでなく、アメリカが戦争に強いからだ。アングロ・サクソンとは絶対に戦争をしてはならない。それが前の戦争で、東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎の原爆投下を経験したわれわれが肝に銘じておくことだ。

弱っていくアメリカとどう付き合っていくかを、われわれも真剣に考えなくてはならないタイミングに至っている。

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