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大阪・関西万博グリーンアロー計画とは? 日本国際博覧会協会の会場デザインP補佐が語る

東スポWEB 2024年7月11日 11時23分

2025年日本国際博覧会協会の会場デザインプロデューサー補佐でランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹氏(58)が「大阪・関西万博」について取材に応じた。忽那氏は「今までの万博の中で最も緑が多い」と指摘。会場で使用された樹木を閉会後に移植する「グリーンアロー」計画を明かした。

忽那氏は建築コンサルティング会社勤務を経て、E―DESIGNを設立。「近畿大学洗心の庭」や「ブランチ大津京」などさまざまな事業を手がけており、日本を代表するランドスケープデザイナーのひとりだ。

ランドスケープデザインとは、屋外の風景や景観を設計・構築することであり、公共空間デザイン全般を指す。自然と人工物の調和を重視し、建物がその場所になじむように設計される。

今回の万博について忽那氏は「大屋根リングの上の所を草原にし“季節の時計”とし、会場の中央に作った森を海に見立てて、島の風景を作る提案をしている。今までの万博の中で最も緑が多い」と胸を張った。

通常新しい公園に使われる樹木は、価格や輸送コストを抑えるため、2~3メートルの高さの若木を植え、数十年かけて成木に育てる。今回は、購入した樹木のほかに各地で大きく育った木をリサイクル活用する。「万博記念公園(吹田市)には大きな樹木が立っているが、実は地下に昔のパビリオンの残骸等が埋まっていて、土が70センチしかないところもある。木は根を下に伸ばせないので、風倒木といって倒れやすい状態。毎年何本か倒れている」と指摘。続けて「倒れそうな木などを『大阪・関西万博』の会場に移設する。向こうの環境も良くなる」と明かした。

既に間伐材を含む約800本の樹木の移設が完了しており、会場全体で2500本の木を使い、静かに命のことを考えられる“静けさの森”を作ると説明し、「森もパビリオン」だと語った。
万博の建設費について万博協会は、誘致段階で1250億円と想定していたが、2度の見直しで2350億円に修正。じわじわ上がることについて忽那氏は「施工予算が少ないのは事実です。ロシアの戦争前に決めた予算なので…。今、建設資材が高騰している」と眉間にしわを寄せる。

大屋根リングの再利用法について「最初はリング全部を移設して、引き受けてくれる自治体を見つけるべきだと言ってた。津波などの高台避難地として活用できないかなど模索したが、やっぱり無理で。僕は、森とリングの一部を残して、その周りが次の開発計画の中心になったらいいな」と持論を述べた。

会場に使用された樹木を閉会後、大阪府内に移植する「グリーンアロー」計画を考案中。その利点について「自治体で『住みたいと思う街』になるかどうかは大きく3つあって、医療体制、教育、公園や緑があること」だとし、樹木の受け入れ先にもメリットがあると語った。

1990年に大阪・鶴見緑地で行われた「国際花と緑の博覧会」では、世界中から植物を集めて展示するため、さまざまな法改正が行われた。「今回は(法改正などは)なかったかな、それより法令順守をして、このお祭りを決めた資金でやれるか、それに重きを置いている」。最後に「法律の壁って話。僕から言うと“発注の仕方の多様性”について検討するべきだった。これも工事が遅れたり、高くなったりする理由。将来のまちづくりとかの試金石になる発注の仕方にチャレンジするべきだった」と語った。

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