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〝推し活〟をイマイチ理解できない人のための推し活入門 なぜ広がる?なぜハマる?

東スポWEB 2024年7月25日 18時4分

〝推し活〟をイマイチ理解できない人のための“推し活”入門! 今や市場規模は1000億円以上と言われ、4人に1人が“推し活”に励んでいるという調査報告もある。人はなぜそんなにも誰かを推したがるのか、そこにどんなビジネスチャンスがあるのか? 流通ウォッチャーの渡辺広明氏にオッサン目線を交えて解説してもらった。

“推し活”とは、アイドルや俳優、アニメやマンガのキャラクターといった「自分の好きなヒト・モノを応援する活動」を幅広く意味する概念だ。

2020年下半期に、女子高生の主人公・あかりが推している男性アイドルが炎上する小説「推し、燃ゆ」(宇佐見りん著)が第164回芥川賞に選ばれたことも大きな話題となり、21年には「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた。

あれから約3年。“推し活”ブームは消えるどころかより大きくなっている。

「推し活がはやるずっと前にオタクという言葉がありましたよね? マンガに詳しい人ならマンガオタクといった具合に、1980年代以降サブカル周辺を中心に、オタクという言葉が使われましたが、同時にそこにはネガティブなイメージもつきまとっていました。オタクが他者から指摘されるのに対して、推し活は自らがオタクであることを明かすのが特徴。ちょっと強引かもしれませんが、カジュアルかつポジティブになったオタクと認識してもらっていいかもしれません」(渡辺氏)

「推し」と「好き」の違いも同様に説明が可能だ。一般的に「好き」が心ひかれる対象を指すのに対して、「推し」は好きだからこそ他人にも紹介したいという気持ちまでを含む。その外向的な性格ゆえに“推し活”は人との交流も活性化させ、そこにビジネスチャンスが転がっているという。

先月オープンした東京ディズニーシーの「ファンタジースプリングス」。映画「アナと雪の女王」「ピーター・パン」「塔の上のラプンツェル」の世界を再現した新エリアには通常のパスポート(8400~1万900円の価格変動制)のほかに、指定された時間から並べる「スタンバイパス」(無料)か、時間指定し短い待ち時間で利用できる「ディズニー・プレミアアクセス」(有料)を事前に用意しなければならない。現地を訪れた渡辺氏はこう分析する。

「そもそもディズニーは入場料だけでなくパーク内での飲食や買い物、宿泊でも利益を上げるファンの囲い込みにたけた企業。推し活グッズも豊富で、クリアポーチなどでディズニーの『推し』とその他の『推し』を組み合わせて自分の好きに浸れるグッズが人気なようです。ただしアトラクションは事前に映画を見ていないと楽しみが半減するものが多かった。私のようにめったに来ないオジサンよりコアファン向けなのでしょうね…」

ディズニーには苦笑いの渡辺氏だったが、乃木坂46のライブでは「推し」の衝撃的な光景を目の当たりにしたという。

「山下美月さんの卒コンに参戦したんですが、推しへの熱気がとにかくすごかった。運営側の演出ではなく、ファンが自発的にボードを掲げる光景は圧巻で、真に『盛り上げたい!』という気持ちがタレントにも強く伝わっていたと思います。その場にいた私もすっかりファンになってしまいました(笑い)」

他人の人生に自分の生きがいを見つける“推し活”という行為は年齢や性別を問わないようだ。

一方で小中学生にまで“推し活”が浸透した影響で金銭面やSNSでのトラブルも懸念されている。「推しは推せるうちに推せ」という言葉があるように、夢中になっている間についつい高額な投げ銭をしてしまったり、明らかに需要が供給を上回る会場限定グッズを買い集めてしまったり、あるいは「推し」を守るためにSNSで誹謗中傷してしまったりと、さまざまな問題が起きていることも事実だ。

「過去のAKB総選挙のときにはCDのようなモノを購入する必要がありました。そうしたグッズが増えていけば本人も過度な消費への罪悪感を持ったし、周囲も気づくことができました。ただ投げ銭のようにボタンひとつで対象に送金する仕組みだと、そもそも形がないのでお金を使い過ぎてしまうことが起きやすい。また地下アイドルやホストなど『推し』が実生活に近すぎるような場合もリスクを伴う。親の立場からすると、『お小遣いの範囲内で』と言い聞かせておくことが必要かもしれませんね」(渡辺氏)

「推し」にどれだけ愛と金を注ごうが、いざというときに助けてくれることはないのだから沼りすぎは禁物だ。

【まとめ】
①推し活は外向的、カジュアルになったオタク
②推し活市場も年齢層も広がっている
③推し活による浪費リスクも高まっている

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