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【菊地敏幸連載#11】日産の守護神・川尻哲郎を4位で獲得できたのは大ラッキーでした

東スポWEB 2024年7月26日 13時35分

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(11)】1993年ドラフトで藪恵壹投手を逆指名で獲得した翌年、94年ドラフトでは甲府工高の山村宏樹投手を1位で指名。阪神、近鉄、楽天と渡り歩き18年も現役を続けてくれました。

2位は日大の北川博敏捕手です。阪神から近鉄に移籍した2001年に代打逆転サヨナラ満塁ホームランでパ・リーグ優勝を決めたあの北川です。現在も阪神で指導者としてチームに貢献してくれています。

3位は熊本工・田中秀太内野手。堅実な守備で野村監督時代は主力遊撃手として活躍した時代もありました。彼は主に九州担当スカウトとして、現役では小幡竜平内野手らの獲得に尽力してくれました。現在は北川と同じく指導者としてユニホームを着て活躍してくれています。

そして私が担当したのは4位・日大二高から亜細亜大、日産自動車を経て入団した川尻哲郎投手です。有力な社会人出身の投手を4位で獲得できたというのは、これは大ラッキーでした。大学時代はそんなに投げていない。オーバーハンドで投げていて、社会人からサイドスローに転向。当時の日産では守護神として活躍していて、ピタッと抑えていました。

同社には先発のエース・北川哲也が在籍していました。同年にヤクルトの逆指名1位で入団しており、こちらは球界全体で評価が高かった。千葉の暁星国際出身で、日本ハム、巨人で活躍した小笠原道大とバッテリーを組んでいた。その後に日産に入社すると94年の社会人日本選手権で準優勝に貢献した好投手です。

もちろん北川の評価は高かったのですが、同様に川尻の評判も良かった。私の予想では2位、3位くらいで消えていくものだと思っていた投手でした。ただ、最後の都市対抗で打たれたんですね。北川が好投してリードを保ったまま終盤戦。ここで川尻だったんですがカンカンカンと一気に打ち込まれた。

私が見ている限りではずっと抑えていたのにね。本当にたまたまなんですよね。でも都市対抗の舞台ですから。各球団のお偉い方なんかが皆で見に来ているタイミングで…。各球団の指名リストから名前が消えかけているという状況でした。

当時の日産の監督は村上忠則。彼は私とは同い年で兵庫の淡路出身で大昭和製紙、大昭和製紙北海道、日産で捕手として活躍し、都市対抗4度の優勝を経験している。ミスター社会人のような経歴を持つ野球大好き人間です。

「個人的に川尻が欲しいんだよ」と直接、連絡を入れて相談すると「ありがとう。川尻にはどの球団も来てないんだよ」と言うじゃないですか。

で、「ちょっと順位は下にはなると思うけど、4番目か5番目くらいになると思うんだけど、獲得できるように仕事さしてもらえるか?」と掛け合ったんです。

当時の横溝スカウト部長にだけは相談しました。4位以下での指名ですが、条件面は恥ずかしくない金額をと。阪神とすればいい投手を下位で獲得できるんですから万々歳です。ただ、水面下でタイガースが動いているよというのがバレると、他球団がまだ動くんですよね。元々は高評価だったわけですから。

ドラフトという性質上、会議当日までどこがどういう指名をしてくるのかというのは分かりません。それでも日産・村上監督との人間関係もあり、無事に獲得へとこぎ着ける方向へ進んで行きました。

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