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「人食いバクテリア」対策は一般的な感染症対策が大前提【呼吸器内科医・佐藤留美先生】

東スポWEB 2024年7月28日 10時5分

【女医のお部屋】溶連菌が流行している。中には「人食いバクテリア」と呼ばれる、劇症型溶血性連鎖球菌に感染し、最悪の場合死んでしまう人もいるという。どういう対策をしたらいいのか、呼吸器内科医の佐藤留美先生に教えてもらおう。

――溶連菌に感染し、命を落とす人もいると聞きます

佐藤医師(以下、佐藤)溶連菌は子供だと風邪症状で治まるケースがほとんどです。しかし、大人の場合は、合併症を引き起こしたり、劇症型溶血性連鎖球菌(以下、劇症型)に感染したりして、重症化するケースがあります。

――どういうふうに合併症は起こる

佐藤 合併症の症状として、肺炎を起こしたり、リウマチ熱を起こしたり、急性糸球体腎炎を起こすことがあります。原因は、中途半端な治療です。治療薬として抗生物質を飲みますが、改善したからと途中で飲むことをやめると、重篤な症状を引き起こす可能性がある。処方された薬を10日間ほどしっかり飲むことで、合併症を起こすことは防げます。

――「人食いバクテリア」とは

佐藤 溶連菌に感染した中でまれにではありますが、急に重篤な症状を引き起こし、1時間単位でどんどん状況が悪くなる人がいます。そういうケースを劇症型に感染したと診断します。症状としては、菌血症といい、血液の中に細菌が入り込み増殖し、高熱が出て体全体に炎症を起こす。それが重篤になると、敗血症といい、筋肉などが壊死したり、肝臓や腎臓のような臓器に異常をきたし、多臓器不全になったりすることも。進行が急速で、いろいろな臓器を脅かす細菌ということで「人食いバクテリア」というニックネームのようなものもついています。

――とても怖い感染症ですね

佐藤 劇症型の死亡率は30%とも言われます。もし一命は取り留めたとしても、筋肉の壊死があれば手や足の切断をすることもあります。感染したら抗生物質を急いで投与しないと、手遅れになりかねません。筋肉の壊死による体の痛みを感じたり、手や足の皮膚の色が赤くなってくるという症状があったりすれば、劇症型の可能性が高いです。すぐに医療機関を受診してください。

――一般的な溶連菌への対策が「人食いバクテリア」の対策にもつながりますか

佐藤 そうですね。溶連菌としての感染症対策は大前提として行いましょう。さらに、劇症型の場合、手や足のちょっとした傷口から体内に入りやすいと言われているので、傷口からの接触感染にも注意するということがポイントになりますね。

☆さとう・るみ 久留米大学医学部卒業。感染症学の研究で医学博士号を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギーの専門医および指導医。感染症やアレルギー疾患の診療経験が豊富で、様々なメディアで発信している。現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。

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